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ピラティスとヨガの違いとは?目的・効果・どっちが自分に向いているかを徹底比較

ピラティスとヨガの違いとは?目的・効果・どっちが自分に向いているかを徹底比較
こんな人に読んでほしい!
  • ピラティスとヨガの違いがよくわからず、どちらを始めたらいいか迷っている方
  • 姿勢改善・体幹強化・柔軟性アップなど、自分の目的に合う運動法を知りたい方
  • 運動初心者でも続けやすい方法を探している人へ

はじめに

近年、ピラティスの人気が急上昇しています。私の住むエリアでも「新しいスタジオができた!」という声を耳にする機会が増えました。もちろんヨガも根強い人気がありますが、最近はピラティスを習い事として始める方もとても多くなっています。

しかしながら、いざ始めようと思ったときに「ヨガとピラティス、どう違うの?」「自分にはどちらが向いているんだろう?」と迷う方も多いのではないでしょうか。どちらも心身に良い影響をもたらす素晴らしいものですが、ヨガとピラティスの目的や効果にはしっかりとした違いがあります。

今回は、そんなピラティスとヨガの違いを様々な視点から徹底比較したいと思います。

「これから始めたい方」「すでにレッスンに通っている方」「ピラティスとヨガどちらが向いているか悩んでいる方」も、ぜひこちらの内容を参考に自分には何が必要かを検討していただけたら嬉しいです。


ピラティスとヨガの違い

まず大前提として、ピラティスもヨガも、どちらも心と体の両面に良い効果をもたらします。そのうえで、一般的には ピラティスは「体」にアプローチしやすく1)ヨガは「心」への効果を感じやすい という違いがあります。

この違いは、それぞれの成り立ちや背景に深く関係しています。
ここからは、まずヨガの歴史から順に見ていきましょう。


ヨガの歴史

ヨガは、約5000年以上前の古代インドで生まれた修行法です。もともとは、心を整え、悟り(深い意識の安定)に近づくための実践法として発展してきました。
日本では「ポーズ(アーサナ)」のイメージが強く、運動や健康法として知られていますが、本来のヨガは「体だけでなく、心のバランスを整える」ことを目的としています。
ヨガの教えには「八支則(はっしそく)」と呼ばれる8つの段階があります。アーサナ(ポーズ)はその中の3段階目で、心を整えるための準備の段階です。最終段階の「サマーディ」は、深い瞑想の中で心と体が一体となる悟りの状態を指します。

つまりヨガとは、呼吸・姿勢・瞑想などを通して、心と体を結びつけるための総合的なトレーニングです。

近年では、心の安定やリラクゼーションを目的に取り入れる人が多く、アーサナ(ポーズ)を流れるように行うことで、自然と呼吸が整い、心が落ち着いていくのを感じられるのがヨガの魅力です。

ピラティスの歴史

一方、ピラティスは、1880年にドイツで生まれたジョセフ・ピラティス氏が考案した、いわば「心身の取り扱い説明書」のようなアプローチです2)。彼は幼少期に病弱であったことから、健康への探求心を強く持ち、ヨガや体操、ボクシング、スキーなど様々な運動を通じて体を整える方法を追求しました。1912年に渡英した際、第一次世界大戦が勃発し、彼は捕虜となります。その収容所で負傷兵のリハビリを目的に運動を指導したことが、現在のピラティスの原点です。この経験を通して彼は、筋肉や姿勢を意識的にコントロールする「コントロロジー(Contrology)」という理論を確立しました。

この考え方は、症状だけに対処するのではなく、不調の原因そのものを正し、人間本来の機能を取り戻すことに重きを置いている点に特徴があります。つまり、「体の動きの癖を整え、正しい姿勢と動きを身につけること」こそが、健康の土台になるという理念です。

戦後、ピラティス氏はアメリカへ渡り、ニューヨークにスタジオを開設しました。多くのダンサーが彼のメソッドを取り入れ、ケガからのリハビリや体のコンディショニングに活用したことで、ピラティスは広く知られるようになりました。現在では、トレーニング・リハビリテーション・姿勢改善の分野で欠かせないエクササイズとして、世界中で親しまれています。

体の不調を感じている方や、姿勢・動作のクセを改善したい方にとって、ピラティスはとても有効な方法といえます。また、ピラティスはすべての運動の基礎になるので身につけた体の使い方は、ヨガなど他の運動にも応用している方が多くいます。

前述のコントロロジーについて、もう少し深く見ていきましょう。

「コントロロジー(Contrology)」は体のすべての動きを意識的にコントロールすることを意味しますが、単なる筋トレではなく、体を理解し、正しい姿勢や動作を再教育するためのアプローチといえます。コントロロジーの基本となる考え方は次の通りです:

コントロジーの基本的な考え

  • 筋肉の働きを意識的に使い分けること
  • 骨格や関節の動きを正しく理解して使うこと
  • 動作中だけでなく、休息中や睡眠中の姿勢にも「重力の法則」と「体のバランス」がどう影響するかを知ること

つまり、自然で正しい体の使い方を日常の中で習慣化していくことが、コントロロジーの目的です。その過程とエクササイズを通して姿勢の崩れや動作のクセに気づき、少しずつ修正していきます。

例えばマーメイドというエクササイズで考えてみます。「あぐらの姿勢から片手を天井に伸ばし、反対側へ体を倒す」一見シンプルですが、背中が丸まっていたり、肩がすくんでしまうと正しい動きにはなりません。

コントロロジーでは、背中をまっすぐに保つ、肩の力を抜いてリラックスする、体の軸を感じながら動く、といった意識的な修正を行います。このように、体の一つひとつの動きを感じながら整えていくことで、やがて日常生活でも無意識に正しい姿勢やスムーズな動作ができるようになります。


ピラティスとヨガの効果の違い

ピラティスとヨガの違いとして体に得られる効果にも違いがあります。ヨガは心の安定を主目的に、呼吸・瞑想・アーサナ(ポーズ)を流れるように組み合わせて行います。近年の研究では、次のようなヨガの効果が報告されています。

ヨガで期待される効果

  • ストレスホルモン(コルチゾール)の低下3)
  • 自律神経機能の改善(副交感神経優位)4)
  • 慢性腰痛・高血圧・睡眠障害・抑うつ症状の改善5), 6), 7)
  • 柔軟性・バランス・体幹安定性の向上8), 9)

ヨガは歴史が長く普及度も高いため、医学文献(PubMed)上の研究件数はピラティスより多いのが現状です。領域としては、心理・ストレス・免疫・慢性疾患に関する研究が豊富です。

一方で、ピラティスは体のコントロール(コントロロジー)を軸に、姿勢・呼吸・動作を細かく意識して動きのクセを修正します。狙いは「燃やす」より効率的に動ける体づくりです。

期待できる効果は以下の通りです。

ピラティスで期待される効果

  • 姿勢の改善(見た目の若々しさ・印象アップ)
  • 体幹の安定と関節の負担軽減(肩こり・腰痛の予防/軽減)
  • 呼吸の質の向上(疲れにくさ・集中のしやすさ)
  • 日常動作の質向上(歩く・立つ・持ち上げるがラクに)

ヨガとピラティスの年齢別トレンドと始めやすさの違い

ヨガとピラティスには、それぞれ「始めやすい年齢層」に違いがあります。米CDC(疾病対策センター)とNCHS(国立健康統計センター)の全国調査NHIS 2022(全米健康インタビュー調査, 2022)では10)、「過去12か月にヨガを行った」と答えた割合は次のとおりです。

過去12ヶ月にヨガを行った回答者の割合

  • 18〜44歳:21.3%(最も多い)
  • 65歳以上:8.0%(約3分の1へ減少)

これに対し、オーストラリアの調査では(AusPlay, 2019)、ピラティスの参加率が最も高いのは、女性45〜54歳の女性であることが報告されています11)。この結果から、ピラティスは中年層から強い支持を得ているといえるでしょう。

加えて、一般的には、ストレスケアやリラックスを目的とする場合はヨガの方が始めやすいとされています。一方、姿勢の崩れや肩・腰の不調、動きのクセを自覚し始める30〜50代ではピラティスを選ぶ傾向があるとも考えられています。


まとめ

ピラティスの本質は、マシンではなく、「自分の体をどうコントロールできるか」にあります。マシンは気づきを促す優れた補助ツールですが、基盤となるのは呼吸・体幹・姿勢の自己調整力です。

スタジオで学んだ感覚を、立つ・座る・歩く・持ち上げるといった日常のすべての動作に落とし込むことが、ピラティスの一番の目的と言えるでしょう。

だからこそ、まずはマットの上で「感じる→整える→動く」というプロセスを丁寧にくり返し、必要に応じてマシンで微調整を行う。そして、再びマットや生活動作に戻して定着させる、この循環が、元に戻らない体の使い方を育てていきます。年齢や運動歴は関係ありません。

今日から、道具に頼るのではなく、自分の体を自分で扱う力を育てていきましょう。
心地よく立ち、楽に歩き、疲れにくく働ける毎日こそが、ピラティスのゴールです。

ぜひ、ヨガとピラティスの違いを理解した上で、皆さんにとって最適な方法を選んでいただければ嬉しく思います。

【参考文献】

1)Australian Sports Commission. (2019). State of Play Report: Pilates. AusPlay. https://www.ausport.gov.au/clearinghouse/research/ausplay/2015-2023

2)Wells, C., Kolt, G. S., & Bialocerkowski, A. (2012). Defining Pilates exercise: A systematic review. Complementary Therapies in Medicine, 20(4), 253-262. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22579438/

3)Latey, P. (2001). The Pilates method: history and philosophy. Journal of Bodywork and Movement Therapies, 5(4), 275-282. https://doi.org/https://doi.org/10.1054/jbmt.2001.0237

4)Pascoe, M. C., Thompson, D. R., & Ski, C. F. (2017). Yoga, mindfulness-based stress reduction and stress-related physiological measures: A meta-analysis. Psychoneuroendocrinology, 86, 152-168. https://doi.org/10.1016/j.psyneuen.2017.08.008

5)Tyagi, A., & Cohen, M. (2016). Yoga and heart rate variability: A comprehensive review of the literature. Int J Yoga, 9(2), 97-113. https://doi.org/10.4103/0973-6131.183712

6)Moosburner, A., Cramer, H., Bilc, M., Triana, J., & Anheyer, D. (2024). Yoga for Depressive Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis. Depress Anxiety, 2024, 6071055. https://doi.org/10.1155/da/6071055

7)Wieland, L. S., Skoetz, N., Pilkington, K., Harbin, S., Vempati, R., & Berman, B. M. (2022). Yoga for chronic non‐specific low back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews(11). https://doi.org/10.1002/14651858.CD010671.pub3

8)Seshadri, A., Adaji, A., Orth, S. S., Singh, B., Clark, M. M., Frye, M. A., Fuller-Tyszkiewicz, M., & McGillivray, J. (2020). Exercise, Yoga, and Tai Chi for Treatment of Major Depressive Disorder in Outpatient Settings: A Systematic Review and Meta-Analysis. Prim Care Companion CNS Disord, 23(1). https://doi.org/10.4088/PCC.20r02722

9)Luo, X., & Huang, X. (2023). The effects of a yoga intervention on balance and flexibility in female college students during COVID-19: A randomized controlled trial. PLoS One, 18(3), e0282260. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0282260

10)Kuptniratsaikul, V., Muaksorn, C., Koedwan, C., Suesuwan, O., & Srisomnuek, A. (2023). Pain reduction, physical performance, and psychological status compared between Hatha yoga and stretching exercise to treat sedentary office workers with mild/moderate neck/shoulder pain: A randomized controlled non-inferiority trial. Complementary Therapies in Medicine, 79, 102996. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0965229923000833

 11)Centers for Disease Control and Prevention, National Center for Health Statistics. (2024). Yoga among adults aged 18 and over: United States, 2022 (NCHS Data Brief No. 501). https://www.cdc.gov/nchs/products/databriefs/db501.htm

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この記事の著者

桑原 紘平

桑原 紘平

ファンクショナルローラーピラティス(Master Instructor)国際シュロス法認定セラピスト(ISST))国際Mackenzie協会credential(認定セラピスト)理学療法士

プロフィール詳細

山梨の大学にて理学療法学科卒業。2012〜2023年にかけて、病院・クリニック・訪問・自費リハ・介護施設で理学療法士として勤務。2015年には介護保険訪問リハビリテーション責任者を兼務し、健康予防教室「WAY TO GO」を設立。2017年には自費リハビリ部門責任者およびデイサービス部門所長を兼務。2023年、個人事業主として開業し、整体・ピラティススタジオ「Personalbody」を設立。現在はグループレッスン、パーソナル指導、講師活動に従事している。
Personalbody公式サイト:https://personal-body.com/

この記事の監修者

川﨑 一平

川﨑 一平

作業療法士 / Ph.D.

プロフィール詳細

1987年熊本県生まれ。大学卒業後、作業療法士として医療機関に勤務。2014年から2年間、青年海外協力隊としてマレーシアの障害者支援NGOで活動し、異文化の中でリハビリや生活支援に携わる。帰国後、東京大学大学院に進学(国際協力学)。2019年より京都橘大学でアカデミックキャリアをスタートさせ、2025年に静岡大学大学院で博士号を取得(情報学)。現在は福岡の令和健康科学大学に勤務し、在宅環境を3Dで表現して生活支援の評価に役立てる研究や、リハビリテーション領域におけるAI技術の応用研究に取り組んでいる。プライベートでは1児の父として子育てに奮闘中。座右の銘は「行動は最良の選択」。大学教育のほか、フリーのOTとして臨床・執筆・講演・事業コンサルティング等にも取り組んでおり、ご依頼はippei.kawasaki.615@gmail.comまで。

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