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年のせい? それともフレイル? 〜今日から始める「元気のつくり方」〜

年のせい? それともフレイル? 〜今日から始める「元気のつくり方」
こんな人に読んでほしい!
  • 70歳以上の方
  • 外出の機会が減った自覚のある方
  • 人と話す機会の減った方
  • 食欲の低下している方
  • 施設入居されている方

はじめに

「最近、疲れやすくなった」、「外に出るのが面倒」、「ご飯が前よりおいしく感じない」、そんな変化を感じたら、それは「年のせい」ではなく「フレイル」のサインかもしれません。

今回は、高齢者の健康とフレイルについて、そして今日からできる元気のつくり方を紹介します。


フレイルとは?

「フレイル(frailty)」とは、「元気」と「介護が必要な状態」のあいだにある「移行期の状態」を指します。年齢を重ねると、筋肉や体力が少しずつ落ち、食欲や気力も低下していきます。でも、それは「年を取ったから仕方がない」ということではなく、生活の工夫や運動、人との関わりなどで元気を取り戻せる状態なのです。

日本老年医学会では、フレイルを「身体的・心理的・社会的な要因が重なって、心身の活力が低下した状態」と定義しています1)

ここで大切なのは、フレイルは体のことだけではなく、心の状態や人とのつながりも含まれるということです。身体が元気でも、気持ちが沈んだり、人との関わりが減ると、心身のバランスが崩れやすくなります。

つまり、フレイルとは病気ではなく、生活習慣や人との関わりなど、自分の暮らしを見つめ直すきっかけなのです。


なぜフレイルを放っておくと危ないの?

フレイルの初期には、自覚がほとんどありません。「疲れやすい」「外に出るのが面倒」「家で過ごす時間が増えた」そんな小さな変化から始まります。でも、そのままにしておくと、転倒が増えたり、体の動きが悪くなって、介護が必要になる可能性が高くなることがわかっています。

研究では、フレイルの人は健康な人に比べて、介護が必要になる危険が数倍高いことが示されています2)。しかし、逆にいえば、早めに気づいて「動く・食べる・話す」ことを続ければ、元気な生活に戻ることも可能です。だからこそ、フレイルは「早めの気づき」と「日常の対策」が大切です。


フレイルの3つの側面

フレイルには、「身体的」「心理・認知的」「社会的」の3つの側面があります。これらは互いに影響し合い、どれか一つが弱ると、他の側面にも悪い影響を及ぼします。

① 身体的フレイル

筋肉の衰えや体重減少、歩くスピードが遅くなることなどが特徴です。特に筋肉の減少は重要なサインとなります。筋肉が減ると転倒しやすくなり、外出が減り、さらに筋肉が落ちるという悪循環に陥ります。

② 心理・認知的フレイル

気分の落ち込み、やる気の低下、物忘れの増加などが見られます。「生きがいを感じにくい」「楽しみが減った」といった変化も要注意です。気持ちが落ち込むと、体を動かす元気も出にくくなり、フレイルが進みやすくなります。

③ 社会的フレイル

人と話す機会が減ったり、一人で過ごす時間が長くなったりすることから始まります。社会的なつながりの減少は健康に大きな影響を及ぼし、人とのかかわりが少ない高齢者は死亡や要介護のリスクが高いことが報告されています3)。「人と関わり続けること」も、体を動かすことと同じくらい重要な健康づくりです。


フレイル予防の3本柱

フレイル予防のカギは「運動」「栄養」「社会参加」。この3つを意識することで、心身の機能を保ち、健康寿命を延ばすことができます。

1. 運動:動かすことで若返る

特別な運動をする必要はありません。大切なのは「今できることを続けること」。エレベーターより階段を使う、近所へ歩いて買い物に行く、家事を積極的に行う。そんな日常の動きも重要な運動となります。

2. 栄養:食べることは元気の源

高齢になると食が細くなり、たんぱく質が不足しがちです。たんぱく質は筋肉を保つために欠かせません。目安は体重1kgあたり1g(体重60kgなら1日60gほど4)。肉・魚・卵・豆製品をバランスよく食べましょう。また、「食べる楽しみ」も大切です。さらに、人と一緒に食事をする“共食”は、心の健康にも良い影響を与えることが報告されています

3. 社会参加:つながりがいちばんの元気の源

人と関わる時間が、心と体の健康を守ります。地域のサロンや体操教室に参加したり、友人とおしゃべりするだけでも大丈夫です。最近では「通いの場」や「フレイル予防教室」が各地で行われており、週1回の集まりでも体操や会話を通じて自然に心身の機能が保たれます。人とのつながりが、いちばんの元気の源です。


作業療法の視点から

作業療法士は、フレイルの改善を「その人らしい生活を取り戻すこと」として支援します。単に筋力を高めたり、運動量を増やすことが目的ではありません。園芸や料理、散歩、友人とのおしゃべりなど、本人が「やりたい」「楽しい」と感じる「作業(Activity)」を通して、心身の機能を引き出していくことが大切です。

たとえば、庭の手入れを再開したいという目標があれば、道具の扱いや姿勢、手の動きを一緒に工夫しながら安全に取り組めるよう支援します。好きな料理を続けるための体力づくりや、買い物に出かけるための移動練習なども、すべて作業療法の一部です。

作業療法士は、身体的、心理・認知的、社会的な側面を総合的に見立て、「できること」を広げていく専門職です。もし最近、体や気持ちの変化に不安を感じたら、作業療法士などの専門家に相談してみるのもよいかもしれません。小さな一歩から、また“自分らしい生活”を取り戻すきっかけになります。


フレイルをチェックしてみよう

フレイルは、誰にでも起こりうる心身の変化ですが、早めに気づくことで予防や改善が可能です。

厚生労働省が作成した「基本チェックリスト」5)は、介護予防のために開発された自己チェック表で、生活機能・運動機能・栄養状態・口腔機能・認知機能・うつ傾向などを25項目で確認します。

たとえば、

  • バスや電車で1人で外出していますか
  • 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか
  • 椅子に座った状態から何もつかまらずにたちあがっていますか
  • 日用品の買い物をしていますか
  • 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか
  • 週に1回以上は外出していますか
  • 周りの人から「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあるといわれますか
  • 以前は楽にできていたことが今ではおっくうに感じられる

など、25項目でフレイルの兆候を確認できます。

「少し当てはまるかも」と思ったら、地域包括支援センターや健康センターに相談してみましょう。

図 1 基本チェックリスト
※厚生労働省「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)より参照」

おわりに ― 支え合いから始まる健康づくり

フレイルは、誰にでも起こりうる「心や体のちょっとした変化」です。でも、家族や友人、地域の人たちが支え合うことで、また元気を取り戻すことができます。「最近どうしてる?」「一緒に歩こうか」そんな何気ない声かけが、誰かの笑顔や健康を守る第一歩になります。

健康は、誰かに「してもらう」ものではなく、自分とまわりの人たちで一緒に育てていくものです。今日、少し体を動かしてみる。誰かとおしゃべりをする。おいしくごはんを食べる。その小さな積み重ねが、心と体の元気につながります。フレイルを知ることは、未来の自分を守ること。難しいことをする必要はありません。

できることから、少しずつ。今日から、あなたらしい“元気のつくり方”を始めてみましょう。

【参考文献】

  1. 荒井秀典.『フレイルの意義』日本老年医学会雑誌,51(6):497–501,2014.
  2. Kojima T. et al. Frailty predicts short-term incidence of future falls among British community-dwelling older people: a prospective cohort study nested within a randomized controlled trial. BMC Geriatrics, 15:155, 2015. DOI: 10.1186/s12877-015-0152-7.
  3. Steptoe A., Shankar A., Demakakos P., & Wardle J. Social isolation, loneliness, and all-cause mortality in older men and women. Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), 110(15):5797–5801, 2013.
  4. 厚生労働省.『日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書』. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316462.pdf
  5. 厚生労働省.『介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)』2009年. https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1c.pdf

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この記事の著者

瀬川 大

瀬川 大

作業療法士 / Ph.D.

プロフィール詳細

1986年兵庫県生まれ。養成校卒業後、作業療法士として医療機関に勤務。臨床での経験を経て、教育と研究の道へ進む。現在は京都光華女子大学 看護福祉リハビリテーション学科 福祉リハビリテーション学科 作業療法専攻に勤務し、地域在住高齢者のフレイル予防や「価値のある活動」を軸とした介護予防プログラムの開発、スマートフォン活用による高齢者のQOL向上支援などに取り組んでいる。

この記事はリハマッチ監督チームにより監修されています

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