こんな変化ありませんか?
健康診断の結果などをきっかけに、体の変化に目を向けてみましょう。最近、こんな変化はありませんか?
- お腹周りが気になってきた
- 血圧が高めになっている
- 血糖値が高いと言われた
こうした変化は、メタボリックシンドロームに近づいているサインかもしれません。
今やこの言葉はよく耳にしますが、メタボリックシンドロームはいくつかの状態が重なって成り立つため、全体像がつかみにくいのが特徴です。
また、自覚症状に乏しいことも多く、気づかないまま放置すると病気のリスクが高まりやすい点にも注意が必要です1)。
ここでは、メタボリックシンドロームの原因や予防、改善に向けたポイントなどについて分かりやすくご説明します。気になる症状がある方は、無理をせず医療機関にご相談してみてください。
メタボリックシンドロームとは
メタボリックシンドロームとは、お腹の内臓脂肪が増えていることを土台に、血糖、血圧、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)の異常がいくつか重なった状態を指します。
具体的な診断基準は以下の通りとされています2)。
メタボリックシンドロームの診断基準
【必ず確認される条件】
■内臓脂肪の蓄積(お腹まわりのふくらみ)
- 男性:腹囲が85cm以上
- 女性:腹囲が90cm以上
※この腹囲は、内臓脂肪の面積が100㎠に相当するとされ、正確にはCT検査などで測定することが望ましいとされます。
【上記に加えて、次のうち2つが当てはまる場合】
■脂質代謝異常(血中の脂質のバランスの乱れ)
- 中性脂肪:150mg/dL以上 かつ/または
- 善玉コレステロール:40mg/dL未満
■血圧が高い
- 収縮期血圧:130mmHg以上 かつ/または
- 拡張期血圧: 85mmHg以上
■血糖値が高い
- 空腹時血糖値:110mg/dL以上
よく似た言葉に、肥満(太りすぎ)がありますが、メタボリックシンドロームは、内臓脂肪が多いことを土台に、将来の病気につながりやすい血糖、血圧、脂質の異常がいくつか重なった状態である点が異なります2)。
そのため、体重が重くても腹囲や検査値が基準に当てはまらなければメタボリックシンドロームとは判定されません。
しかし、逆に体重は標準でも内臓脂肪が多く、血糖・血圧・脂質の異常が複数みられる場合は、リスクが高い状態であるといえます。見た目だけでわからないのが、メタボリックシンドロームの特徴のひとつです。
主な原因と症状
男性は20~30代で増え始めて40代以降で多く、女性は40代から増え始めて50代以降で増加が目立つ傾向があります2)。このように、年齢とともに内臓脂肪がつきやすくなるため、注意が必要です。
しかし、根本的な原因は生活習慣であることが多く3)、次の積み重ねがメタボリックシンドロームにつながります。
【メタボリックシンドロームの主な原因4)】
- 運動不足(体を動かす機会が少ない生活)
- 不適切な食生活(食べすぎ・栄養の偏り)
- 喫煙(血管に負担がかかりやすい習慣)
- 過度の飲酒(お酒の飲みすぎが続く習慣)
- 過度のストレス(生活リズムや食習慣が乱れやすい状態)
メタボリックシンドロームそのものには、はっきりした自覚症状が出にくいのが特徴です。しかし、体の中では血管への負担が少しずつ積み重なっていきます。
その結果、放置すると次のような病気につながることがあります。
【メタボリックシンドロームによって引き起こされる主な病気1)】
- 虚血性心疾患(心臓の血管が細くなったり、詰まったりする病気)
- 脳血管障害(脳の血管が詰まったり、出血したりする病気)
- 閉塞性動脈硬化症(主に足の血管が細くなったり、詰まったりする病気)
- 糖尿病(血糖値が高い状態が続く病気)
- 脂肪肝(肝臓に脂肪がたまる病気)
このように、運動不足や食生活の乱れといった生活習慣の積み重ねが、さまざまな病気のきっかけとなります。だからこそ、小さな変化に気づいた段階から生活を見直し、良い習慣を身につけることが重要になります。
予防と治療
メタボリックシンドロームの予防と治療で大切なのは、内臓脂肪を増やさないこと、そして必要に応じて減らしていくことです。
内臓脂肪は、お腹の中の臓器のまわりにつく脂肪ですが、食事と体の動かし方を見直すことで減らしやすい脂肪でもあります。そのため、日常生活の中でできることから取り組むことが勧められています。
【食事のポイント】
内臓脂肪を増やさないためには、食事を工夫することが大切です。しかし、食事は毎日の生活を彩る楽しみの一つでもあります。
最初から極端に量を減らすのではなく、まずは食材の選び方や調理方法を工夫して、無理なくエネルギーを抑えるところから始めるとよいでしょう。慣れてきたら、必要に応じて甘いものを食べる回数を減らしたり、量を少し控えたりするなど、段階を追って取り組むことで継続しやすくなります5)。
こうした小さな工夫の積み重ねが健診の数値の改善に表れ、「続けてよかった」という実感が次のモチベーションにつながります。
【運動のポイント】
ウォーキングやランニングは、特別な道具を必要とせずに始められる運動です。特にランニングは、ゆっくりであってもウォーキングより多くのエネルギーを消費するため、有効な予防や治療の手段といえるでしょう。
一方で、体力に不安がある方は、無理をせずウォーキングから始めてください。続けるコツとしては、歩く時間や距離を少しずつ増やすだけでなく、コースを変える、景色や季節の変化に目を向けるなど、飽きにくい工夫をすることが挙げられます。
歩くだけだと続けにくいという場合は、水中歩行や水泳、ゴルフなどもお勧めです6)。このように、楽しみや目的のある活動を取り入れて、体を動かす機会を増やしていきましょう。
運動は一つではなく、自分に合ったいくつかの選択肢を持っておくことで続けやすくなります。
【お薬】
すでに高血糖、血圧高値、脂質代謝異常がみられる場合は、医療機関で治療目標を確認し、生活改善とあわせてお薬が勧められることもあります。
例えば血圧の薬は、中性脂肪や血糖の数値に影響が出にくいものと、影響が出やすいものがあります。一般に、ACE阻害薬・ARB・Ca拮抗薬は影響が出にくいとされています。
一方で、β遮断薬や利尿薬(高用量)は、中性脂肪や血糖の数値に影響が出ることもあるため3)、医師が体の状態に合わせて薬を選びます。体質や量、飲み合わせによって合う薬が変わることもあるため、気になることがあれば医師や薬剤師に相談しましょう。
リハビリテーションの役割
予防や改善の必要性、行うべきことが分かっていても、1人でモチベーションを維持し続けることや、体の不調を抱えて実践し続けことは意外と難しいものです。
リハビリテーションの専門職は、「運動が必要なのは分かるけど続かない」「膝や腰の痛みが出ないか不安」「時間がない」といった現実の生活やお体の状態に合わせて、実践できる形に落とし込み、伴走する役割を担います。ここで、実際の支援の一例をご紹介します。
【Aさんの場合】
Aさんは、健康診断で腹囲の増加に加え、血圧と中性脂肪の値が高いことを指摘されました。歩かないといけないという思いはありましたが、昔から運動が苦手で、時折膝が痛くなることが心配でした。
また仕事が忙しく、運動の成果が見えにくいことも、なかなか継続をする気になれない理由となっていました。
そこでリハビリテーションの専門職は、いきなり運動を始めるのではなく、運動時の血圧や脈拍、息切れの出方、一日の生活の流れなどを確認し、「安全にできる範囲」と「続けやすい時間帯」を一緒に整理しました。
さらに、膝の不安に対しては、歩き方や立ち座りの仕方、筋力や柔軟性などを確認し、膝に負担がかかりやすい動作の癖を抑え、簡単な準備体操や痛みが出にくい体の動かし方を提案しました。
また、通勤時の歩く速さや、座りながら短時間で行える運動を伝えるなど、忙しくてまとまった時間の取れないAさんが、運動を短く分けて効果的に行えるように工夫をしました。
成果が見えにくいという悩みに対しては、腹囲を週1回測定したり、運動をした日はカレンダーに印をつけるなどして、体や行動の変化が目に見えるようにしました。
こうした工夫を続けるうちに、Aさんの運動への心理的ハードルは下がり、「自分に合ったやり方がある」と前向きに取り組めるようになりました。
まとめ
メタボリックシンドロームは、単なる肥満ではなく、内臓脂肪の蓄積に加えて血圧・血糖・脂質の乱れが重なり、将来の心臓病や脳卒中のリスクが高まった状態です。予防や改善においては、無理に頑張りすぎるのではなく、続けられる形で生活習慣を整えていくことが大切です。
また、「一人ではなかなか続かない」「体の痛みや不安がある」という場合は、医療機関やリハビリテーションの専門職を頼ることも大切です。あなたの生活や体の状態に合わせて、無理のない方法を一緒に考えてくれるでしょう。
メタボリックシンドロームの予防や改善は、短距離走ではなく、長く続けながら生活を整えていくことが大切です。小さな一歩が、未来の健康へとつながっていきます。
参考文献
1)田屋雅信,他.BMI over 30 肥満患者のリハビリテーション.東京:診断と治療社;2023.P.xii-xvi.
2)日本肥満学会.肥満症診療ガイドライン2022.東京:ライフサイエンス出版;2022.p.18-27.
3)荻原俊男,他.予防とつきあい方シリーズ 脂質異常症・肥満~動脈硬化~.東京:メディカルレビュー社;2011.p.40-41,188-189.
4)厚生労働省.生活習慣病のイメージ.https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu/pdf/ikk-a20.pdf(参照日:2026年1月13日).
5)林芙美.肥満・メタボリックシンドローム予防の食事.https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-009(参照日:2026年1月13日).
6)坂本静男,他.メタボリックシンドロームに効果的な運動・スポーツ.東京:ナップ;2011.P.88-105,118-141,161-172.
