はじめに
ピラティスを始めたいと思い、スタジオを探し始めたときに、多くの方が最初に戸惑うのが「マットピラティス」と「マシンピラティス」の違いではないでしょうか。
メニューにはそれぞれ別のクラスが並び、体験レッスンも分かれていますが、「何がどう違うのか」「どちらを選べばよいのか分からない」と感じる方は少なくありません。
さらに、「効果に違いはあるのか」、「なぜ料金に差があるのか」、「初心者にはどちらが向いているのか」といった疑問が浮かんでくるのも自然なことです。
せっかくピラティスを始めるなら、「自分に合わない方法を選んでしまい、思ったような効果を感じられなかったらどうしよう」と不安になるのは、決して特別なことではありません。
本記事では、マットピラティスとマシンピラティスについて、効果の考え方、料金相場、メリット・デメリットを整理しながら比較していきます。流行やイメージだけで選ぶのではなく、自分の目的や身体の状態に合った方法を選べるよう、専門的な視点から分かりやすく解説します。
ピラティスとは?
ピラティスは、20世紀初頭にドイツ人のジョセフ・ピラティスによって考案されたエクササイズメソッドです。彼は幼少期に虚弱体質であったことから、自身の健康を取り戻すために解剖学や運動理論を学び、研究と実践を重ねました。
その過程で確立されたのが、「コントロロジー(Contrology)」と呼ばれる独自の考え方です。コントロロジーとは、身体の動きを意識的にコントロールすることを意味します。
ピラティスでは、単に筋肉を鍛えるのではなく、呼吸に意識を向け、集中力を高めながら、正確で質の高い動きを行うことが重視されます。こうしたプロセスを通して、全身が協調して働く、効率の良い身体の使い方を身につけていきます。
マットピラティスとマシンピラティスの違い
現在、ピラティスは大きく「マットピラティス」と「マシンピラティス」の2つに分けられます。
マットピラティスは、自分の体重(自重)を負荷として床の上で行う方法です。
一方、マシンピラティスは専用機器を用いて行います。どちらも目指すゴールは共通しており、健康的で機能的な身体を育てることにありますが、そこに至るまでのアプローチ方法には違いがあります。
両者の違いは、「自分の力で身体をコントロールするか、マシンの補助や負荷を活用するか」という点に集約されます。
マットピラティスでは、重力に逆らいながら自分の身体を自分の筋力で支え、動かしていきます。床という安定した環境で行う一方、体幹や姿勢を保つための筋力やコントロール力がより求められます。そのため、エクササイズを通して、自分の身体をどのように使っているのかに気づきやすい点が特徴です。
一方、マシンピラティスでは、バネ(スプリング)などの仕組みを利用し、動きを補助したり、あえて負荷を強めたりすることができます。負荷の量を細かく調整できるため、筋力が弱い方や動きに不安がある方でも、安全に正しい動きを体験しやすいという利点があります。
また、身体のクセを修正する際のサポートとして、マシンが「気づき」を与えてくれる点も特徴の一つです。
このように、マットピラティスとマシンピラティスは、どちらが優れているかを比較するものではありません。それぞれ身体へのアプローチ方法が異なるため、自分の目的や身体の状態によって、適した方法は変わってきます。
マットピラティスに期待される効果・メリット・デメリット
<期待される効果>
自分の身体を自分の力で支えながら動くため、体幹を中心とした全身の安定性が高まりやすくなります。
重力の影響を直接受ける環境で動くことで、日常生活に近い感覚の中で身体の使い方を学ぶことができます。
また、動作を自分で調整し続ける必要があるため、身体のクセや使い方の偏りに気づきやすく、「自分の身体をどう動かしているか」を理解する力が育ちやすい点も特徴です。
メリット
マットピラティスは、特別な器具を必要としないため、比較的手軽に始めやすく、コストを抑えながら継続しやすい方法です。
スタジオで学んだ内容を自宅で復習しやすく、日常生活の中に取り入れやすい点は大きな利点といえます。また、グループレッスンが中心となることが多く、周囲と一緒に取り組むことでモチベーションを保ちやすい点や、エクササイズの自由度が高い点もメリットとして挙げられます。
デメリット
マットピラティスは自分自身で動きをコントロールする割合が高いため、フォームが崩れていても気づきにくい場合があります。
特に初心者のうちは、自己流になってしまうと、狙った効果を感じにくくなることもあります。また、床で行う動きが中心となるため、立位や歩行など、日常動作により近い動きの練習は比較的少なめになる傾向があります。
マシンピラティスに期待される効果・メリット・デメリット
<期待される効果>
マシンピラティスでは、動作が一定の軌道に導かれやすいため、正しい身体の使い方を体感しやすくなります。無理な力を使わずに動けることで、しなやかで機能的な筋肉の使い方を学びやすい点が特徴です。
また、負荷を細かく調整できるため、筋力や運動経験に関わらず、自分のレベルに合った強度でエクササイズを行いやすく、安全性を保ちながら身体を整えていくことができます。
メリット
マシンピラティスの大きなメリットは、「正しく動けている感覚」を身体で理解しやすい点にあります。
インストラクターの指導とマシンのサポートを組み合わせることで、フォームの修正がスムーズに進みやすくなります。
また、左右差の調整や、特定の部位へのアプローチがしやすく、初心者から経験者まで幅広く対応できる点も、マシンピラティスならではの強みといえます。
デメリット
マシンピラティスは設備や指導体制が必要となるため、料金が高めに設定される傾向があります。
また、基本的にはスタジオに通う必要があり、自宅で同じ環境を再現することは難しい点もデメリットです。
さらに、マシンで得た感覚を日常生活の動作に落とし込むには、意識的な練習や指導が必要になる場合があります。
マットピラティスとマシンピラティスの料金相場
ピラティススタジオの料金は立地や運営形態によって異なりますが、都市部の一般的なスタジオを想定すると、マットピラティスとマシンピラティスでは料金帯に違いがあります。
マットピラティスはグループレッスンが中心で、月4回程度の受講の場合、8,000円から15,000円前後が相場とされています。一度に複数人で行えるため、比較的リーズナブルな価格設定になりやすく、初めてピラティスを始める方にも取り組みやすい点が特徴です。
一方、マシンピラティスは少人数制やパーソナル指導が基本となり、グループレッスンでも月4回で15,000円から25,000円程度、パーソナルレッスンでは30,000円から45,000円程度が目安となります。専用機器を使用することや、安全管理・指導体制の違いが、料金に反映されています。
料金の高低だけで判断するのではなく、自分の目的や求めるサポートの度合いに合った方法を選ぶことが大切です。
第3の選択肢 〜フォームローラーを使ったピラティス〜
マットピラティスとマシンピラティスの中間的な選択肢として、フォームローラーを使ったピラティスがあります。床の上で行う点はマットピラティスと共通していますが、ローラー特有の不安定さが加わることで、身体への働きかけは異なります。
フォームローラーを用いたピラティスでは、次のような特徴が得られやすくなります。
- 不安定な支持面による体幹への刺激
- 接触面から得られる感覚フィードバックによる身体認識の向上
- 動作精度や集中力が求められることで生まれるコントロール力の強化
- 動きを補助しながらも適度な負荷を与えるという、補助と負荷の両立
これらの特徴により、マシンほど環境が限定されず、マットよりも身体感覚を得やすいというバランスの取れたアプローチが可能になります。
フォームローラーは比較的導入しやすく、自宅でも安全に取り入れやすい点も魅力です。スタジオで学んだ感覚を日常のエクササイズに落とし込みたい方や、マットとマシンの橋渡しとして活用したい方にとって、有効な選択肢の一つといえるでしょう。
まとめ
マットピラティスとマシンピラティスは、どちらが優れているというものではなく、目的や身体の状態によって役割が異なります。大切なのは、自分に合った方法を選び、無理なく続けていくことです。
また、自宅での取り組みとして、フォームローラーを使ったピラティスを取り入れることで、スタジオで学んだ感覚を日常の中で活かしやすくなります。
フォームローラーの不安定さは、身体への意識を高め、動きの質を見直すきっかけになります。まずは継続できる形から始め、ピラティスを生活の中に少しずつ定着させていきましょう。
参考資料
- 中村尚人, ファンクショナルローラーピラティス ―フォームローラーでできる104のエクササイズ【第2版】, ナップ, 2022.
- 中村尚人, 笠原可奈子, コメディカルのためのピラティスアプローチ, ナップ, 2014.
- ジョセフ・H・ピラティス, Return to Life Through Contrology ~リターン・トゥー・ライフ・スルー・コントロロジー~ ― ピラティスで、本来のあなたを取り戻す!, 現代書林, 2010.
