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急に家族が入院になった!どうするリハビリ?〜急性期から回復期リハビリテーション病院の探し方〜

急に家族が入院になった!どうするリハビリ?〜急性期から回復期リハビリテーション病院の探し方〜
こんな人に読んでほしい!
  • 家族が入院した方
  • 入院する病院を探している方
  • 急性期病院に入院されている方
  • リハビリ病院に入院している方

80代一人暮らしの父が緊急搬送 ~翌日に主治医から聞いた説明には「リハビリ」の4文字~

多くの人は「私に限って、急に入院なんて起きない」と思って暮らしています。だからこそ、その瞬間が訪れたとき——何をするべきなのか? その言葉は何を意味するのか?——戸惑うのは自然なことです。準備なんて、誰もしていません。それが普通です。ほとんどの家族が同じ地点からスタートします。

今回は、急性期病院から回復期リハビリテーション病院、あるいは自宅への退院につなげるリハビリテーションの道筋を整理してみたいと思います。


急性期病院と回復期リハビリテーション病院

<ポイント>急性期病院と回復期リハビリテーション病院のリハビリ

急性期病院

= 命を守る・治療の集中+寝たきりによる体力低下などを予防する

= リハビリテーションへの土台作り

回復期リハビリテーション病院

= 暮らしを取り戻すための集中訓練+実際の生活に近い練習

= 自宅・社会復帰までの準備と橋渡し

自宅や外出先で大きな怪我や事故にあった時、救急車で最初に運び込まれるのは急性期病院です。ここでは、検査・手術・点滴・薬などの治療を集中的に行い、命と全身状態を守ることが最優先となります。

この段階では、病気や怪我の治療が中心です。リハビリテーションでは、体調が許す範囲で、短時間「ベッドから起きる、座る、立つ」といったことを行います。これがどれくらい大切なことなのでしょうか。もし何もせずに寝たきりで過ごすと、次のようなことが起こります。

  • 関節が固まって動きにくくなる
  • 筋力が急激に落ちる
  • 生活リズムが崩れる
  • 飲み込む力が弱くなる

こうした治療中に起きる体の衰えを防ぐことも、急性期病院でのリハビリテーションの重要な役割です。

一方、回復期リハビリテーション病院は、治療の山場を越えたあとに、家や社会に戻って困らないための力を集中的に訓練することや、その環境を整える場所です。


誰がサポートするの?

  • 理学療法士 (歩く、立つ、バランスなどの専門家)
  • 作業療法士 (着替え、トイレ、家事、仕事などの専門家)
  • 言語聴覚士 (話す、飲み込むの専門家)
  • 病棟の看護師、栄養士など

どんな練習をするの?

  • 起き上がる、寝返る、立ち上がる、歩く、階段を上る
  • トイレ動作、入浴動作、着替え
  • 料理、掃除、キーボード入力など家事や仕事
  • 自動車やバスの乗降車 など

退院に向けた準備

  • 家族への介助方法の指導(車いすへの移し方など)
  • 退院前の自宅訪問(自宅の手すり設置や福祉用具の提案)
  • 退院後のサポート体制の調整(訪問リハビリテーションやデイサービスなど)

つまり、回復期リハビリテーション病院は、退院後の生活を「設計」し、その実現へ「橋渡し」するところまでを一貫して整える場所です。


急性期病院での入院期間は約2週間

日本の一般病床(主に急性期病床)の平均在院日数は15.9日(2025年3月)です1)つまり、急性期病院での入院は比較的短い期間で治療の山場を越え、次の行き先を早めに選ぶ必要があります。

いつ相談すればいい?

医療スタッフから勧められなければ入院後2~3日以内に、病院の地域連携室を訪ねてみましょう。ここには、退院後のリハビリテーションや生活を支える専門スタッフ(医療ソーシャルワーカーや看護師など)がいます。

なにを相談すればいい?

  • 「回復期リハビリテーション病院への転院は可能ですか?」
  • 「自宅退院の可能性はありますか?」
  • 「次のステップを教えてください。」

回復期リハビリテーション病院への転院が可能な条件

回復期リハビリテーション病院で集中的にリハビリテーションを受けるためには、[対象となる病気・怪我であること]や[タイミングがあっていること]、[訓練に耐えうる体力があること]、[医学的に回復の見込みがあること]の4つが揃っていることが基本となります。条件にあてはまるかどうかは、地域連携室の職員に聞いてみましょう。


回復期リハビリテーション病院の選び方

現在、回復期リハビリテーション病院(病棟数)は全国に2122病棟(2025年3月現在)あります2)。その中で、ご家族にとって自宅生活や社会復帰に困らないリハビリテーションに直結する体制かどうかを確認していきます。

以下は、一般的に確認されることが多い項目です。

1) 1日あたりのリハビリテーションの時間および土日祝日の状況

一日の訓練量(総時間・コマ数〔20分1コマ〕)や、土日祝日における提供体制によって、実際に受けられるリハビリテーションサービスの量は変動します。一般的には、1日あたり概ね2〜3時間程度の訓練が提供されることが望ましいでしょう。

2) 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(リハ専門職)の在籍状況

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といった各職種が揃っているか、またその人数、得意分野、有資格(例:嚥下、装具、認定療法士など)によって対応の幅が変わります。 病院ごとの強みを確認しましょう。

3) 家族への指導実施状況

ベッドから車いすへの移乗や階段、外出時の自動車への乗車方法など、退院後に一人で行いにくいことに対する介助方法や、退院後に実施すべき訓練をいつ・どこで・誰から教えてもらえるかを確認することで、退院後の生活をイメージしやすくなります。

4) 自宅環境評価と退院前訪問を実施しているか

回復期リハビリテーション病棟では、必要に応じて退院前にご自宅へ訪問します。理学療法士などのリハビリ専門職が、段差・浴室・階段・手すりの有無などを実際に確認し、安全に暮らすための工夫(手すりの位置、用具の選び方、動線の整え方)を具体的に提案します。この訪問評価が実施されているか、またその実施時期や内容まで確認すると、退院後の生活準備がよりスムーズになるでしょう。

5) 病棟での過ごし方(自主練習や環境について)

回復期リハビリテーション病院に入院中、リハビリテーション専門職と一緒に行うリハビリテーションは1日最大おおよそ3時間です。残りの21時間の過ごし方こそが、リハビリテーションの効果をぐっと後押しします。無理のない範囲で、安全に配慮しながら、普段の生活をリハビリに変える工夫を積み重ねることが、退院後の生活と安心に繋がります。

6) 家族の同席や面会のルール

訓練に家族が同席できるかどうかは、本人の意欲の後押しになり、できるようになったことを家族が把握して在宅生活を具体的にイメージするための大切な機会です。同席の可否や同席できる場面・時間帯・人数の制限、撮影(動画/写真)の可否などを事前に確認しておくと安心です。

7) 入院期間の目安やベッド状況

回復期リハビリテーション病院への入院可否や想定入院期間、そして現在の空きベッドの状況を確認しておくと、転院時期や退院までの段取りを具体化しやすくなります。

8) 家族が通いやすい距離や交通アクセス

家族が無理なく通えるかは、リハの同席・面会の継続性に直結します。自宅からの所要時間だけでなく、公共交通機関の有無や駐車場の台数・料金、シャトルバスの有無なども確認しましょう。

9) 病院の特色や専門プログラムの有無

病院ごとに得意分野や専用プログラム、設置機器などが異なります。ご本人の課題に合うプログラムがあれば、回復の近道になることもあります。実施には医師の許可や評価が必要な場合があるため、有無だけでなく条件や流れまで確認しておくと安心です。

確認例

自動車運転評価

高次脳機能障害リハビリテーション

嚥下評価・訓練

ロボットを使ったリハビリテーション

義肢・装具外来

復職・就労支援など


まとめ

急性期は「命を守る・整える」時期。回復期は「家や社会に戻る力をつくる」時期。どちらもゴールは元に戻すではなく、退院後に困らないことです。そして、回復期リハビリテーション病院を選ぶときは、「家や社会で困らない」「家や社会でいきいき暮らせるか」に繋がるかという視点で見るのが大切です。

「どうすれば、自宅や社会に戻って“いきいき”暮らせますか?」
まずは、地域連携室の職員やリハビリテーション専門職に一声かけてみましょう。

【参考文献】

1)回復期リハビリテーション病棟協会(2025). 病棟届出数(2025年3月1日現在)http://www.rehabili.jp/publications/sourcebook/graf2025/graf2.pdf(Retrieved October 28, 2025)

2)厚生労働省(2025). 病院報告(令和7年度3月分概数)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/byouin/m25/dl/2503kekka.pdf(Retrieved October 28, 2025)ストを入力してください。

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この記事の著者

中井 秀昭

中井 秀昭

作業療法士 / MUP

プロフィール詳細

1981年大阪府生まれ。作業療法士(OT)。京都橘大学健康科学部作業療法学科専任教員。大阪公立大学大学院・博士課程に在籍し、地域リハビリテーションと職能育成の双方から“暮らしの再構築”に取り組む。研究テーマは、①農業×福祉の協働(農福連携)と通所介護における農作業導入の多面的効果、②OT教育におけるパラスポーツを用いた障がい理解・職業アイデンティティの形成過程、③初期キャリアOTのワーク・エンゲイジメントとジョブ・クラフティング(JD-Rモデル)など。量的・質的を統合する混合研究やスコーピングレビュー、縦断調査を用い、臨床・教育・制度設計に接続可能な実装知を志向する。学会・行政・NPO・事業所等と協働しながら、通所現場のアウトカム評価、パラスポーツ教育のカリキュラム開発、障害福祉領域の人材育成にも携わる。プライベートではフットサルや遠泳、バトミントンなどを仲間と楽しむ。座右の銘は、「旗を上げよ、まず一歩」。

この記事の監修者

川﨑 一平

川﨑 一平

作業療法士 / Ph.D.

プロフィール詳細

1987年熊本県生まれ。大学卒業後、作業療法士として医療機関に勤務。2014年から2年間、青年海外協力隊としてマレーシアの障害者支援NGOで活動し、異文化の中でリハビリや生活支援に携わる。帰国後、東京大学大学院に進学(国際協力学)。2019年より京都橘大学でアカデミックキャリアをスタートさせ、2025年に静岡大学大学院で博士号を取得(情報学)。現在は福岡の令和健康科学大学に勤務し、在宅環境を3Dで表現して生活支援の評価に役立てる研究や、リハビリテーション領域におけるAI技術の応用研究に取り組んでいる。プライベートでは1児の父として子育てに奮闘中。座右の銘は「行動は最良の選択」。大学教育のほか、フリーのOTとして臨床・執筆・講演・事業コンサルティング等にも取り組んでおり、ご依頼はippei.kawasaki.615@gmail.comまで。

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