自分が利用できるリハビリテーションサービスにはどのようなものがあるのか?
リビリテーションというと、一般的に医師の診察や指示を必要とする「治療」や「訓練」といった医学的リハビリテーションのイメージを持たれる方が多いと思います。そうしたリハビリを受けるためには、社会保障制度の一部である医療保険などを利用する必要がありますが、2006(平成18)年、診療報酬制度改定に伴い疾患別リハビリテーション及び算定の日数制限が設けられました1)。
これにより、身体機能の回復や日常生活活動(Activity of daily life, ADL)の向上などを目的とした医療保険中心の急性期・回復期リハビリテーションと、日常生活の自立支援や生活機能の維持向上を主な目的とした介護保険中心の生活期リハビリテーションとで機能分化が方向づけられることとなりました。
病気や障がいと共に過ごす生活期での過ごし方は、本当に人それぞれであり、かつ短期集中的なリハビリを受けられる急性期や回復期より圧倒的に長く続いていきます。その際、頼りになるのは、リハビリテーションを含む介護保険の各種サービスです。
ただし注意点があります。まず、リハビリを受けられるのは「要介護」または「要支援」と認定された方に限り、「非該当」の場合は介護保険サービスが受けられません。また、認定を受けた場合でも、区分(要介護度など)によって利用できる回数や時間に上限があるため、希望する内容のリハビリが十分に受けられない場合があり、制度上の課題として議論が続いています。
近年は、市区町村の取り組みとして「要支援1,2」や「非該当」の方向けに健康増進、介護予防を目的とした総合事業や一般介護予防事業などが展開され2)、介護予防サービスや運動教室などが実施されています。
しかしながら、対象者のニーズとして、より専門的なリハビリや個別対応への需要から、公的保険外によるリハビリサービスが新たな選択肢として登場するようになりました。
こうした新たなリハビリのスタイルが広がっている一方で、利用者にとっては、どのサービスが使えるのか分かりづらいことがあるかもしれません。
各リハビリテーションサービスの特徴
そこで、各リハビリテーションサービスの特徴を紹介しようと思います。(表1)。

①公的保険内リハビリサービス
外来リハビリ:
外来リハビリは、医療機関に通院して受けるリハビリで、医療保険が適用されます。費用はそれぞれの保険負担割合に応じて決まっており、医師の指示に基づいてサービスが提供されます。リハビリ期間の目安は、疾患によって定まっており最大で180日間となっています。
入院・外来問わず通算でカウントされますが、高次脳機能障害の患者(失語、失認など)や重度の頚髄損傷の患者など疾患によって例外となるケースもあります。リハビリの終了が見えてきた段階で、主治医やスタッフと今後の支援体制について話し合うことが大切です。
通所リハビリ:
通所リハビリは、外来リハビリと異なり介護保険内のサービスで、原則的に送迎が含まれています。心身機能の維持回復や自立支援を目的に医師の指示のもと、リハビリが行われています3)。
利用にあたっては、ケアマネジャーによるヒアリング後、担当者会議で要望と必要性についてサービス提供者も交えて話し合い、最終的にケアプランへ組み込んでもらう必要があります。そのため、サービス開始までに一定の時間がかかります。
また、リハビリの他、家族の介護負担軽減、社会的交流の促進や認知症予防の側面もあるため、個人や要介護度によって利用目的や滞在時間が変わってくる傾向にあり、リハビリの内容も施設ごとに異なる他、地域によって供給にばらつきがみられる可能性があります。ケアマネジャーや近くの地域包括支援センターなどに尋ねることをお勧めします。
訪問リハビリ:
訪問リハビリハビリは、通院などが困難な患者(利用者)に対して、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われ、リハビリスタッフが居宅を訪問して生活環境に即したリハビリを提供するサービスです4)。利用に際しては、通所リハ同様の手続きが必要になります。
リハビリスタッフは、訪問リハビリ事業所と訪問看護事業所に在籍していますが、事業所によって在籍している人数や職種が異なります。また、介護保険の有無や疾患によって利用できる保険が変わるので注意が必要です。通所リハビリとの併用も可能ですが、訪問リハビリとの目的の違いをケアマネジャーの作成するケアプランに明記する必要があります。
②公的保険外リハビリサービス
公的保険外のリハビリサービスは、介護保険の対象に当てはまらない人や保険の制限を超えた支援を専門的に受けたい人が利用しています。サービスの提供方法も、通い型や訪問型、オンラインと多様化しており、リハビリの期間や回数、セラピストの指名など、顧客の要望に合わせやすい特徴があります。
ただし、この場合、保険対象外のため費用は全額自己負担となります。また、医療依存度が高い方や医療的フォローが必要な方にはリスクがあるため、予めかかりつけ医に相談することをお勧めします。
続いて、事例を一つ紹介します。
Case1:公的制度の狭間から新たな目標を見出したAさん
ある日、買い物帰りに縁石につまずいたAさん(70代女性)は、転倒して左手首を骨折し、そのまま救急搬送され手術を受けることになりました。4人家族の食事を担っていたAさんにとって、手が使えないことは大きな支障であり、再び調理ができるようになることを目標に入院中からリハビリに励みました。
手術後の経過は順調で、手術箇所の状態も良いことから程なく退院となりましたが、左手の課題が残っていたため、医師の指示により外来リハビリで継続フォローをすることになりました。しかし、自宅から病院まではおよそ10kmの距離があります。タクシーや電車を使って通う日々は、Aさんにとって時間的にも経済的にも少しずつ負担になっていきました。
数か月後、目標としていた家事ができるようになり、外来のリハビリは終了となりましたが、左手の動きは完全に回復はしていません。焦ったAさんは、リハビリを継続しようと介護保険の申請をしましたが、身の回りのことを一人で行い認知機能にも問題がなかったため、結果は「非該当」。介護保険のリハビリを利用することはできませんでした。
しかし、自治体が行っている一般介護予防事業の中に介護予防教室の取り組みがあることを知って参加することにしました。今でも左手の動きは元通りとはいきませんが、日常的に困るほどでもなく、折り合いをつけながら過ごしています。
ケース1 解説
- Aさんは、医療保険から介護保険移行に伴う制度の狭間で継続的なリハビリを受けられませんでした。
- Aさんは、調理の目標は達成したものの、やっぱり左手首や指が右手と同様動いてほしいと願っていました。
地域包括支援センターに相談すると、介護予防教室を教えてもらいました。
希望していたリハビリではなかったものの、参加者との交流の中で他の参加者とレシピ交換をしたり工夫を共有したりするうちに前向きな気持ちを持つことができるようになり、今の自分を受け入れられるようになりました。
保険外リハビリとは別に、自治体が実施している介護予防事業があります。
Aさんのような医療保険終了後の「まだ困っているけど、介護保険は非該当」といった方や体力を維持したいといった方の選択肢の一つとして重要な役割を果たしています。ここでのリハビリは、「治療」といった専門的なものではありませんが、運動や交流を通じて生活機能の維持向上を図ることが期待できます。
おわりに
現在、リハビリテーションサービスは少しずつ広がりをみせています。ここまで、様々なリハビリテーションに関わる制度やサービスについて解説してきましたが、先ず何より大事なのは、自分がどのような日常を取り戻したいと考えているのか、自分がリハビリに何を期待しているのかを意識しておくことです。
時間とともに状況や心境は変わっていきます。自分自身の希望や生活のかたちを大切に、納得のいくリハビリサービスを見つけることが大切です。
【参考文献】
1)厚生労働省(2006):平成18年度診療報酬改定の概要について.2025年10月28日取得,https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/02/dl/s0215-3u.pdf
2)厚生労働省(2025):介護予防・日常生活支援総合事業について(概要).2025年10月28日取得,https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001531681.pdf
3)厚生労働省(2023):通所リハビリテーション.2025年10月28日取得, https://h-crisis.niph.go.jp/wp-content/uploads/2023/07/001119143.pdf
4)厚生労働省(2023):訪問リハビリテーション.2025年10月28日取得, https:// www.mhlw.go.jp/content/12300000/001123920.pdf
