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【東京都】高齢者と障害者のための公的サービス活用ガイド:医療保険・介護保険とリハビリテーションの適切な連携

こんな人に読んでほしい!
  • 東京都にお住まいの高齢者や障害者の方、およびそのご支援をされているご家族
  • 退院後のリハビリテーション継続や在宅療養への移行に不安を感じている方
  • 医療保険や介護保険などの制度を正しく理解し、必要な公的サービスを適切に利用したい方

はじめに:必要な支援を確実に受けるための公的サービス理解

東京都における高齢化の進行と医療・介護の連携体制の拡充に伴い、地域で安心して生活を続けるための公的サービスは年々整備されています。

日本の行政制度の基本理念は、厚生労働省が示す通り「必要な人に、必要なだけ、必要なサービスを提供する」という点にあります 。しかし、これらの支援の多くは、利用者自身やその家族が制度を理解し、適切な時期に申請を行うことで初めて提供される「申請主義」に基づいています

東京都は、国の基準に加えて独自の助成制度を数多く設けており、高齢者や障害者に対する非常に手厚いセーフティネットが構築されています。それにもかかわらず、医療保険、介護保険、障害福祉制度のそれぞれの役割や連携の仕組みが複雑であるため、本来必要とされる支援が適切に届かない事態が生じることがあります。

本稿では、リハビリテーションの継続から、住宅改修、日々の医療費負担の軽減に至るまで、東京都の高齢者および障害者が利用できる主要な公的サービスを解説し、皆様がご自身の状態に合わせた最適な支援を過不足なく受けられるための情報を提供します。


東京都シルバーパスの適切な利用と手続き

高齢者の外出機会を確保し、社会参加やリハビリテーション施設への通所を支援するための重要な公的サービスとして「東京都シルバーパス」があります1)2)

これは、70歳以上の東京都民を対象に、都内の路線バスや都営地下鉄、日暮里・舎人ライナーなどを利用できる乗車証を発行する制度です 。外出による身体活動の維持は、高齢者の健康寿命を延ばす上で大切な役割を果たします。

シルバーパスの発行費用は、利用者の所得状況に応じて「1,000円」または「12,000円(※経過措置あり)」のいずれかに設定されています 。この費用負担の基準を正確に把握しておくことが、制度の適切な利用に繋がります。

表1:東京都シルバーパスの費用区分と対象条件

発行費用対象となる方の条件(2025年度/2026年度の基準)必要な確認書類の例
1,000円当該年度の住民税が非課税の方、または前年の合計所得金額が135万円以下の方介護保険料納入通知書、住民税非課税証明書など
12,000円
上記の条件に該当しない方(※一定の負担軽減措置が適用される場合あり)マイナンバーカード、運転免許証などの本人確認書類

1,000円のシルバーパスの対象となるかどうかは、毎年市区町村から送付される「介護保険料納入(決定)通知書」の所得段階区分や、「合計所得金額」の欄を確認することで判断できます 。合計所得金額が135万円以下であれば、負担の少ない1,000円での発行が可能です 。

シルバーパスの新規申請は、満70歳になる誕生月の初日(1日生まれの方は前月の初日)から行うことができます 。手続きは都内のバス営業所などの窓口で行われますが、本人の体調が優れない場合は、家族等の代理人による申請も認められています 。

また、近年ではスマートフォンを利用した電子申請での更新も可能となっており、高齢者や障害者が身体的な負担なく手続きを完了できる環境が整えられつつあります 。


医療保険から介護保険への移行:切れ目のないリハビリテーションのために

病気や怪我による入院治療を経て退院する際、身体機能の回復と維持を図るリハビリテーションをどのように継続するかは、高齢者や障害者にとって極めて重要な課題です。ここで理解しておくべき制度上の仕組みが、医療保険における「疾患別リハビリテーション料の算定上限日数」です 。

厚生労働省の規定により、医療保険を用いて病院等で受けられる疾患別リハビリテーションには、発症や手術日からの上限日数が定められています 。これは、限られた医療資源を急性期および回復期の集中的な治療に適切に配分するための措置です 。

表 2 医療保険における疾患別リハビリテーションの算定上限日数

疾患別リハビリテーションの区分算定上限日数の標準主な対象疾患の例
脳血管疾患等リハビリテーション180日脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脊髄損傷など
運動器リハビリテーション150日大腿骨骨折、変形性関節症、関節リウマチなど
呼吸器リハビリテーション90日肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など
廃用症候群リハビリテーション120日急性疾患等に伴う安静による心身機能の低下など

(※厚生労働省 令和6年度診療報酬改定等に基づく標準的な規定 )

この上限日数を経過した後は、生活機能の維持・向上を目的とした介護保険によるリハビリテーションへと移行することが制度上想定されています 。ここで最も留意すべき点は、医療保険から介護保険への切り替えの際に、手続きの遅滞によってリハビリテーションが受けられない空白期間を生じさせないことです 。

リハビリテーションの中断は、特に高齢者において筋力の低下や関節の拘縮を招く恐れがあります。そのため、退院後もリハビリテーションが必要だと想定される患者の場合は、入院中から病院の医療ソーシャルワーカーに介護保険の申請について相談を行い、退院の1ヶ月前には地域のケアマネジャーと具体的なサービス調整を開始することが望ましいです。

介護保険で利用できるリハビリテーションには、実際の居住環境に合わせて動作訓練を行う「訪問リハビリテーション」と、専用の機器を用いて集中的な訓練や他者との交流を行う「通所リハビリテーション(デイケア)」があり、対象者の状態や目標に応じてこれらを適切に組み合わせることが、在宅生活の安定に直結します 。


東京都の心身障害者医療費助成制度(マル障)による支援

継続的な通院やリハビリテーションが必要な重度の障害者にとって、医療費の自己負担は大きな懸念材料となります。

東京都では、このような方々の保健の向上と福祉の増進を目的として、医療保険の自己負担額の一部または全部を助成する「心身障害者医療費助成制度(通称:マル障)」という独自の公的サービスを実施しています3) 4)5)

本制度の対象となるのは、東京都内に住所を有し、身体障害者手帳(1級・2級、一部の内部障害3級を含む)、愛の手帳(1度・2度)、または精神障害者保健福祉手帳(1級)を所持している方です 。

この制度を利用する上で極めて重要な要件が「年齢制限」です。原則として「65歳に達する日の前日まで」に対象となる障害者手帳を取得し、申請を済ませておく必要があります 。

65歳以上になってから初めて手帳を取得した場合は、特例を除きこの助成の対象とはなりません。したがって、後遺症等により障害の固定が見込まれる場合は、医療機関の専門職と相談の上、適切な時期に手帳の取得手続きを進めることが不可欠です。

助成の内容としては、住民税非課税者の場合は保険診療内の自己負担分が助成対象となり、住民税課税者の場合でも、外来は1割負担(月額上限18,000円)、入院は1割負担(月額上限57,600円)といった上限が設けられ、医療費の負担が大幅に軽減されます。

本制度には所得制限が設けられており、申請者本人の所得が基準額を超過すると助成の対象外となります 。この際、各種の社会保険料控除や医療費控除などを正しく申告することで、判定される所得額が適切に計算されます。制度の恩恵を正当に受けるためには、毎年の正確な税務申告という行政手続きを怠らないことが重要です 。

表3 心身障害者医療費助成制度の所得制限基準額の目安

扶養親族の数所得制限基準額(令和7年9月以降の例)収入額の目安
0人3,661,000円約 5,252,000円
1人4,041,000円約 5,728,000円
2人4,421,000円約 6,203,000円

心身障害者福祉手当による生活の支援

医療費の助成に加えて、東京都では障害に伴う特有の生活費の負担を軽減するため、「心身障害者福祉手当」という現金給付の公的サービスを提供しています6)車椅子での移動に伴う交通費や、日常的な介護用品の購入など、障害を持つ高齢者や障害者の生活には多様な経済的需要が存在します。

この手当は、障害の程度に応じて月額15,500円、または月額10,000円が支給され、年3回(4月、8月、12月)に分けて指定の口座へ振り込まれます 。

支給対象となるのは、身体障害者手帳や愛の手帳等を所持する方ですが、特別養護老人ホームなどの施設に入所している場合は、生活の基盤が施設にあると見なされるため支給の対象外となります 。また、所得制限が設けられているため、毎年市区町村において所得判定のための確認が行われます 。

この手当も申請主義であるため、手帳を取得した際や東京都へ転入した際には、必ず市区町村の窓口で自ら申請手続きを行う必要があります。


住宅改修と介護用品に関する公的サービスの活用

高齢者や障害者が自宅で安全に生活を続けるためには、身体機能に合わせた生活環境の整備が不可欠です。これらを支援するため、介護保険制度には「住宅改修費の支給」という仕組みが用意されています。

介護保険を利用した住宅改修では、手すりの取り付けや段差の解消、和式便器から洋式便器への取り替えなどの工事に対し、原則20万円までの範囲で費用の7割から9割が支給されます。

しかし、浴室の抜本的なバリアフリー化や、階段昇降機の設置など、大規模な住宅改修が必要となるケースでは、介護保険の20万円の枠だけでは費用を賄いきれないことが多々あります。ここで活用すべき公的サービスが、各市区町村が独自に実施している「介護保険外の住宅改修助成(上乗せ給付)」です。

例えば東京都江東区の場合、介護保険とは別に「高齢者住宅設備改修給付」として、浴槽の取り替えに最大379,000円、階段昇降機の設置に最大800,000円の基準額を設けて助成を行っています7)

これらの住宅改修制度を利用する際の厳格なルールとして、「必ず工事を着工する前に申請を行い、承認を得る」ことが求められます。事後申請は一切認められないため、住宅改修を検討する際は、ケアマネジャーやリハビリテーション専門職と協議し、身体状況に即した理由書を作成した上で事前申請を行うことが必須です。

さらに、日々の生活を支える公的サービスとして「紙おむつの支給および購入費助成」があります8)。多くの自治体が、一定の要介護認定を受けた高齢者等に対しておむつの支援を行っています。

江東区の例では、要介護3以上の認定を受けた在宅の高齢者に対し、毎月75点分の紙おむつを現物で無料配送する事業が実施されています。また、病院の規定等により、行政から支給されるおむつの持ち込みが禁止されている医療機関に入院している場合には、月額上限7,500円までの「おむつ購入費助成」が用意されています。

この現金助成は「必ず入院中に申請すること」が条件となっており、退院後や事後の請求は対象外となるため、入院決定時における迅速な手続きが求められます。


高額医療・高額介護合算療養費制度による負担軽減

長期間にわたるリハビリテーションや医療機関への通院、さらに訪問介護や通所サービスなどの介護保険サービスを併用していると、世帯全体の自己負担額が著しく高額になる場合があります。このような事態に対するセーフティネットとして機能する公的サービスが「高額医療・高額介護合算療養費制度」です9)10)

この制度は、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間に支払った医療保険と介護保険の自己負担額を世帯単位で合算し、法定の限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです 。

表4 高額医療・高額介護合算療養費制度における年間自己負担限度額

所得区分(70歳以上の場合)年間の自己負担限度額(世帯合算)
現役並み所得者Ⅰ670,000円
一般560,000円
低所得者Ⅱ(住民税非課税)310,000円
低所得者Ⅰ(一定の年金収入以下等)190,000円

(※厚生労働省 令和8年度基準に基づく)

支給対象となる世帯には、毎年2月から3月頃に加入している医療保険者(市区町村や健康保険協会など)から申請の案内が送付されます。

同じ医療保険に加入している家族であれば費用を合算できるため、通知を受け取った際は期限内に「高額介護合算療養費支給申請書」を提出することで、医療保険と介護保険の双方から適切な還付を受けることができます。


要介護認定調査において正確な状況を伝えるために

これまで解説してきた介護保険サービス(リハビリテーションの継続、住宅改修、おむつ助成など)を過不足なく利用するためには、その入り口となる「要介護認定」において、対象者の心身の状態が正確に評価される必要があります。市区町村から派遣される調査員による訪問調査では、ありのままの事実を客観的に伝えることが求められます。

高齢者は調査員の訪問に対して気丈に振る舞い、普段は困難な動作を無理に行ってみせたり、介助が必要な事実を控えめに申告したりする傾向があります 。その結果、実際の生活実態よりも軽い要介護度(あるいは非該当)と判定され、必要な公的サービスが受けられなくなるケースが存在します。

適正な評価を受けるためには、日頃から介護を担っている家族が可能な限り同席し、本人が語りにくい夜間の状況や排泄のトラブル等の事実を客観的に補足することをおすすめします。

また、動作能力について問われた際は「できる・できない」の二択ではなく、「歩くことはできるが転倒のリスクがあるため、常に家族が見守りを行っている」といった、具体的な介護の手間を伝えることが制度の趣旨に合致します 。


まとめ

東京都における高齢者と障害者のための公的サービスは、医療保険と介護保険の制度連携、および市区町村の独自事業によって、非常に重層的な支援体制が構築されています。

シルバーパスによる外出支援、疾患に応じたリハビリテーションの段階的な移行、マル障や手当による経済的負担の軽減、そして住宅改修による安全な居住環境の確保など、これらはすべて、対象となる方々が住み慣れた地域で尊厳を保ちながら生活を継続するために整備された不可欠な制度です。

これらの公的サービスを適切に利用するためには、制度の存在を知り、定められた要件(年齢制限や事前申請のルールなど)を満たした上で、正確な行政手続きを行う「申請主義」の原則を理解することが大前提となります。

自身の状況に変化があった際や、退院後の生活に向けた準備が必要となった際には、速やかに市区町村の担当窓口や地域包括支援センターへ相談を行い、必要な支援を必要なだけ、確実に受け取るための行動を起こしていただくことを推奨します。

※本稿の情報は2026年3月の情報を基にしています。

参考文献

厚生労働省, 介護保険制度における高額介護合算療養費制度の負担限度額の見直しについて, https://www.mhlw.go.jp/content/000334526.pdf

東京都シルバーパスのご案内, 東京都シルバーパスの取得について, https://www.silver-pass.tokyo/obtaining/

昭島市, 東京都シルバーパスの交付, https://www.city.akishima.lg.jp/kenko/korei/1003133/1003137.html

東京都北区, 心身障害者医療費助成制度(マル障), https://www.city.kita.lg.jp/socialcare-health/medical/1008518/1008520.html

江戸川区, 心身障害者医療費助成(マル障・都制度), https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e041/kenko/fukushikaigo/shogaisha/iryo/marusho.html

板橋区, 障がい者手当や医療費助成などの所得制限基準額, https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kenko/shogai/josei/1003219.html

練馬区, 心身障害者福祉手当(区制度), https://www.city.nerima.tokyo.jp/hokenfukushi/shogai/teate/shinshin_fukushi.html

江東区, 高齢者住宅設備改修給付(介護保険外), https://www.city.koto.lg.jp/212106/fukushi/koresha/service/jisshi/6602.html

江東区, 高齢者紙おむつ支給及びおむつ購入費助成, https://www.city.koto.lg.jp/212106/fukushi/koresha/service/jisshi/6590.html

厚生労働省, 高額医療・高額介護合算療養費制度について, https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/07/dl/tp0724-1b.pdf

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この記事の著者

リハマッチ運営局

リハマッチ運営局

プロフィール詳細

リハビリのセラピスト(国家資格保持者)と当事者を直接繋ぐプラットホームを運営。
リハビリ業界の将来を見据え、サービスの在り方に真剣に向き合いつつ、新しい働き方を創造していく取り組みを行っている。
https://www.reha-match.com/

この記事はリハマッチ監督チームにより監修されています

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