訪問リハビリは、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が自宅を訪問し、実際の生活環境に合わせて身体機能や日常生活動作の維持・回復を支援するサービスです。要介護・要支援認定を受けた方は介護保険が優先され、1割負担の場合20分約300円から利用できます。主治医やケアマネジャーへの相談から診察・指示を経て開始する5ステップの手順と、専門職の役割を理解することが安心な在宅生活の実現に繋がります。
はじめに
病気やけが、加齢などによって外出が難しくなったり、自宅での生活に不安を感じたりすることがあります。また、病院を退院したあともリハビリを続けたいものの、通院が難しいという方もいるでしょう。そんなとき、自宅で専門的なリハビリテーションを受ける方法の一つに「訪問リハビリ」があります。
訪問リハビリでは、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)がご自宅などを訪問し、リハビリテーションを行います。支援するのは、筋力や関節の動きといった身体機能だけではありません。「歩く」「着替える」「食事をする」「人と話す」など、自宅で生活していくために必要なさまざまな活動も支援の対象です。
この記事では、訪問リハビリとはどのようなサービスなのか、PT・OT・STそれぞれの役割、対象となる方や費用、医療保険と介護保険の違い、利用開始までの流れについて解説します。
訪問リハビリとは?
訪問リハビリとは、医師の指示のもと、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)がご自宅などの生活の場を訪問し、心身機能の維持・回復や日常生活の自立を支援するサービスです1)。病院で行うリハビリとの大きな違いは、実際に暮らしている場所がリハビリの場になることです。病院では、設備の整った環境で身体機能の回復を図ったり、歩行や着替えなどの動作を練習したりします。しかし、自宅に戻れば玄関には段差があり、階段の高さや浴室の広さ、家具の配置も家庭によって異なります。
訪問リハビリでは、こうした実際の環境を見ながらリハビリを行えます。例えば、「自宅の階段を安全に上りたい」「一人でトイレへ行きたい」「近所まで買い物に行きたい」といった、日々の暮らしの中で困っていることを具体的な目標に設定できます。ご家族に介助方法を伝えたり、福祉用具や住宅環境について提案したりすることもあります1)。
病院でのリハビリにも、退院後の生活を見据えて準備する大切な役割があります。一方、訪問リハビリでは、自宅で実際に生活してみて初めて分かった困りごとに、その場で取り組めることが特徴です。
訪問リハビリでは何をする?PT・OT・STそれぞれの役割
訪問リハビリに関わるPT・OT・STは、それぞれ異なる専門性を持っています。理学療法士(PT)は、「起き上がる」「立つ」「歩く」といった基本的な動作を支える専門職です。筋力や関節の動き、バランス能力などを確認し、運動や歩行練習を行います。自宅では、ベッドからの起き上がりや階段の上り下り、玄関から外へ出る動作などを実際に確認し、安全に移動する方法を考えることもあります2)。
作業療法士(OT)は、食事、着替え、入浴といった日常生活動作をはじめ、料理や掃除などの家事、仕事、趣味など、生活の中で行うさまざまな活動を支える専門職です。実際の浴室や台所で動作を確認し、安全で行いやすい方法を一緒に考えるほか、福祉用具や生活環境について提案することもあります3)。
言語聴覚士(ST)は、話す・聞く・読む・書くといったコミュニケーションや、食べ物を噛んだり飲み込んだりすることを支える専門職です。脳卒中などで言葉が出にくくなった方への評価や練習、コミュニケーション方法の提案のほか、食事中のむせなど、飲み込みに不安がある方への評価・練習などを行います。
もちろん、3職種の役割が完全に分かれているわけではありません。生活上の目標や困りごとに合わせ、それぞれの専門性を生かしながら連携して支援します。
どんな人が利用できる?費用はいくら?
訪問リハビリは、病気やけがなどによって日常生活に支障があり、医師がリハビリテーションを必要と判断した方が対象です。脳卒中の後遺症がある方、骨折後の歩行や日常生活に不安がある方、パーキンソン病などで身体を動かしにくくなった方など、さまざまな方が利用しています。介護保険では、要介護1~5の方が「訪問リハビリテーション」、要支援1・2の方が「介護予防訪問リハビリテーション」を利用できます4),5)。
気になるのが費用です。介護保険を利用する場合、自己負担は原則としてサービス費用の1割で、一定以上の所得がある方は2割または3割となります6)。厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」では、訪問リハビリを受けた場合、1割負担の方の目安は、20分につき300円程度として示されています4)。
ただし、これはあくまで目安です。利用時間や回数、事業所の所在地、サービス内容、各種加算などによって実際の金額は変わります。別途費用がかかる場合もあるため、利用前に事業所やケアマネジャーへ確認が必要です。また、医療保険を利用する場合も、年齢や所得、利用する制度や診療内容などによって自己負担額が異なります。
医療保険と介護保険の違いは?利用までの流れ
訪問リハビリには、介護保険によるものと医療保険によるものがあります。ただし、利用者がどちらかを自由に選択できるわけではありません。要介護・要支援認定を受けている方は、原則として介護保険の訪問リハビリテーションが優先されます7)。
一方、介護保険の対象とならない方でも、在宅で療養しており、通院してリハビリを受けることが困難で、医師が訪問によるリハビリを必要と判断した場合には、医療保険による訪問リハビリを受けられることがあります8)。また、病気の急な悪化など一定の条件に該当する場合は、要介護・要支援認定を受けている方でも医療保険が適用される場合があります7)。
いずれの場合も、訪問リハビリを始めるには医師の診察や指示が必要です。介護保険を利用する場合には、ケアマネジャーとも相談しながら、ケアプランに位置づけるサービスや利用回数などを決めていきます。
すでに要介護・要支援認定を受けている方は、改めて認定を受ける必要はありません。利用を考えている場合は、担当のケアマネジャーや主治医に「自宅でリハビリを受けたい」と伝えてみましょう。
訪問リハビリの特徴は、自宅という実際の生活の場でリハビリを受けられることです。PT・OT・STがそれぞれの専門性を生かしながら、身体の状態だけでなく、日々の暮らしの中で困っていることにも一緒に取り組みます。
自宅の段差や家具の配置など、実際の生活環境に合わせて練習できるほか、ご家族への介助方法の助言や、福祉用具・住宅環境の提案を受けられることも訪問リハビリの特徴です。利用できる制度や費用は、要介護認定の有無や身体の状態、利用するサービスなどによって異なります。
「自宅でリハビリを受けたい」「今の生活をできるだけ続けたい」と思ったら、まずは主治医や担当のケアマネジャー、地域包括支援センターなどに相談してみてください。
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM NET).訪問リハビリテーション, https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/handbook/service/c078-p02-02-Kaigo-04.html
- 公益社団法人日本理学療法士協会.理学療法とは, https://www.japanpt.or.jp/about_pt/therapy/
- 一般社団法人日本作業療法士協会.日本作業療法士協会 作業療法の定義, https://www.jaot.or.jp/about/definition/
- 厚生労働省.介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」:訪問リハビリテーション, https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group5.html
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM NET).介護予防訪問リハビリテーション, https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/handbook/service/c078-p02-02-Kaigo-28.html
- 厚生労働省.介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」:サービスにかかる利用料, https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
- 厚生労働省.「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について, https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000935687.pdf
- 厚生労働省.診療報酬の算定方法「C006 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」, https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9729&dataType=0&pageNo=7
