専門家によるお悩み解決情報

Articles

カテゴリー: 健康・予防の知識
タグ: 有識者記事, 腰痛, その他(5件)

急性腰痛症(ぎっくり腰)の発生機序と病態生理:組織学的損傷からレッドフラッグの識別まで

こんな人に読んでほしい!
  • 慢性的な腰の痛みに悩まされている方
  • ぎっくり腰になった経験のある方
  • どのようにしてぎっくり腰が発症するか知りたい方
  • ぎっくり腰の標準的な治療法を学びたい医療従事者

要約

急性腰痛症(ぎっくり腰)は、筋肉・筋膜の微細な損傷や、椎間関節・椎間板への急激な圧力などが複合的に絡み合って発症します 。病院のレントゲンやMRIなどの画像検査では「異常なし」と診断される非特異的腰痛が大部分を占めますが、中には骨折や感染、腫瘍などの重篤な疾患が隠れている危険なサイン(レッドフラッグ)もあるため注意が必要です 。治療は過度な安静を避け、痛みのない範囲で日常生活を維持することが早期改善と再発予防の近道となります 。


はじめに

突然、動けなくなるほどの激痛に襲われる「ぎっくり腰」。
多くの方が「筋肉をひねっただけ」と考えがちですが、実際にはそれほど単純ではありません。

逆に、「この痛みは本当に安全なのか?」と考える方もいるでしょう。
「骨折・腫瘍など、見逃してはいけない疾患が隠れているかも・・・」、「病院で診てもらったほうが良いのかな?」

そんな心配に駆られる方も少なくないはず。

本記事では、原因と治し方について

  • そもそもぎっくり腰とは何か
  • 身体で何が起こっているのか
  • 危険な痛みとの見分け方 
  • ぎっくり腰の治し方

前提として、まず腰痛についての説明からします。腰痛は「非特異的腰痛」と「それ以外」に分類されます。

非特異的腰痛とは明確な原因が特定できない腰痛を指します1)

逆にそれ以外というのは骨折や腫瘍、感染といったはっきりした原因があるものとなります。

成人の役80%が腰痛になるといわれており、その腰痛の約80〜90%は上述の「非特異的腰痛」に分類されます。そして、ぎっくり腰も非特異的腰痛に分類されます。

「結局ぎっくり腰の原因は分からないのでは?」と思われがちですが、ここで誤解してはいけないのは、「原因がわからない」=「何も起きていない」ではないという点です。

非特異的腰痛では、以下の組織が関与しています。

・筋肉

・筋膜

・椎間板

・椎間関節

セラピストでない方は筋肉って言葉以外はなじみのない言葉かもしれませんが、あまり難しく考えず、ぎっくり腰含む非特異的腰痛はこれらの組織に負担がかかったり、傷ついたりすることで痛みが発生する程度の理解で大丈夫です。(必要な部分は後々説明します。)

では、ぎっくり腰の際、各組織に何が起こっているのか見ていきましょう。

何が起こっているのか?

ぎっくり腰の際、各組織に何が起こっているかを解説します。

筋・筋膜の微細損傷

ぎっくり腰の最も一般的な原因の一つが、筋肉・筋膜の損傷です。

・筋肉:伸び縮みによって、身体を動かしたり、姿勢を保ったりする組織

・筋膜:筋肉同士の滑りを助け、動きをスムーズにする組織

筋肉はご存じかもしれませんが、筋膜はあまりなじみがないですね。

鶏むね肉に張り付いている薄い膜といえば、イメージがつく方もいるのではないでしょうか。

では次に、この筋肉と筋膜に何が起きているのかを見ていきましょう。

その結果、微細な損傷が起こり、炎症が発生して強い痛みとなります。これが筋肉・筋膜由来のぎっくり腰といわれるものです。

この際、筋肉は痛みに対する反応として筋収縮(傷ついた組織を守るために力が入っている)が起こります。この防御反応により筋肉への血流が低下し、痛みがさらに増強するという悪循環が起こります。

微細な損傷ならそこまで痛くないのではないかと思った方もいるかもしれません。

しかし、痛みの強さ=損傷の大きさではありません神経の過敏になることで、小さな損傷でも強い痛みとして感じることがあります。

椎間関節の機械的破綻

椎間関節とは:背骨の椎骨同士をつなぐ関節

椎間関節由来のぎっくり腰は約30%2)と言われています。椎間関節では以下のようなことが起こっています。

急なねじり運動や腰を反る動作により、関節を保護し、滑らかに動かす助けをしている関節を包み込む膜(関節包)を挟み込んでしまうことがあります。これが痛みの原因となりぎっくり腰となるわけです。

このタイプは

  • 動き始めに強い痛み
  • 一定の姿勢をとり続けると痛み軽減 

という特徴があります。

椎間板の微細損傷と炎症

椎間板も重要な痛みの発生源です。椎間板は背骨の椎骨間にある軟骨性の組織です。

椎間関節と椎間板の役割

・椎間関節:背骨を動かす

・椎間板:背骨にかかる衝撃を吸収する

と考えるとわかりやすいかもしれません。椎間板由来のぎっくり腰は約25~40%3)と言われています。

ここまで、ぎっくり腰の原因となる組織と動きについて説明してきました。

一つずつ分けて説明したので、それぞれ別物と認識してしまった方もいるかもしれません。しかし実際は複数の組織が同時に関与するケースがほとんどです。

つまり、ぎっくり腰における強い痛みの原因はどこか一つが悪いわけではなく様々な組織の損傷が同時に起こり発生している可能性が高いです。

また、どのような動きでぎっくり腰となるかについても説明しましたが、その動作だけが原因ではありません。

ぎっくり腰の原因

  • 肥満
  • 運動不足
  • ストレス
  • 喫煙
  • 姿勢不良による組織への日々の負担

以上の状態は腰の組織に対して血流阻害、物理的な荷重の増加など、様々な形で負担をかけます。

その結果、一定の動作が引き金となってぎっくり腰が発症するのです。

なぜ「画像で異常なし」と言われるのか?

最初に説明しましたが、ぎっくり腰は腰痛に分類されるので、病院に行ってMRIやレントゲンで撮影しても特に異常が見られないことが多いです。

それはなぜなのでしょうか?MRIやレントゲンは「構造」を見る検査です。しかし、先ほど説明したようにぎっくり腰は以下のような要素が関与します。

・筋肉・筋膜の滑走不全 や損傷

・関節の微細機能障害

・神経の感作(痛みの過敏化) 

これらを画像で確認することは困難です。そのため、ここで重要なことは「異常なし」=問題なしではないということです。
これが、ぎっくり腰の原因と治し方が分かりにくい理由の一つです。

危険な痛みの見分け方

ぎっくり腰といえば激痛をイメージする方も多いと思います。実際になった方は「重篤な疾患ではないか?」と心配になったのではないでしょうか。

そんな重篤な疾患かどうかを見分けるためには、ご自身に以下の徴候があるかどうかを確認してみてください。

ぎっくり腰と重篤な疾患との見分け方チェックリスト

  • 発熱
  • 原因不明の体重減少
  • 癌の既往   
  • 夜間痛
  • 安静時痛
  • 強い外傷歴
  • 下肢の進行性麻痺
  • 排尿、排便障害

上記の兆候がある場合以下を示唆することがあります4)。

  • 腫瘍 
  • 感染(化膿性脊椎炎など) 
  • 骨折 
  • 馬尾症候群

腰痛患者における悪性腫瘍の頻度は約0.1%5)という報告もありますが、重篤な疾患であるサインを見逃さないように注意しましょう。

ぎっくり腰の治し方

ぎっくり腰の治療方法として、従来は「安静」が推奨されていましたが、現在は真逆で、過度な安静は推奨されません。

推奨される対応1)(当事者の方向け)

発症後すぐでも、痛みの伴わない範囲で活動を行い、徐々に強度を高めていくことが大切です。期間は目安であり、個人間で変わってくるのでどの程度の運動が許されるかは、医師に相談することを推奨します。

推奨される対応(セラピスト向け)

患者のぎっくり腰がどの時期にあるのかを見極め、痛みにあったリハビリテーションを意識するとよいかと思います。

まとめ

ぎっくり腰は筋肉や関節、椎間板といった組織が複合的に損傷・炎症を引き起こし、痛みとなっています。

治すためには、発症直後でも、痛みのない中で活動を続けていき、経過につれて運動強度を上げていくことが改善・再発予防への近道です。

誰にでも起こりうる身近な疾患ですが、その中には決して見逃してはいけない重篤の疾患である可能性もあります。小さな痛みでも、まずは医療機関を受診することが大切です。

 参考文献

  1. 日本整形外科学会・日本腰痛学会:腰痛診療ガイドライン2019
  2. Manchikanti L, et al. Pain Physician. 2013
  3. Schwarzer AC, et al. Spine. 1995
  4. Deyo RA, et al. Low Back Pain. N Engl J Med.
  5. Nicholas Henschke et al. Screening for malignancy in low back pain patients: a     systematic review.

ぎっくり腰の繰り返しや、引かない腰の痛みでお悩みの方へ

ぎっくり腰は突発的なアクシデントに見えますが、実は日頃の「筋力低下」「柔軟性の低下」「姿勢の崩れ」が積み重なり、限界を迎えた瞬間に発症するケースがほとんどです。「何度もぎっくり腰を繰り返してしまう」「痛みが引いた後も腰が重だるい」という状態を根本から変えるには、原因を突き止めた上での正しいセルフケアとリハビリが欠かせません。

リハマッチでは、整形外科疾患や動作分析に精通した理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が、あなたのお身体の状態やライフスタイルに合わせ、無理のない在宅リハビリや再発予防の運動プログラムをマンツーマンでサポートします。

「自分に合った正しいストレッチを知りたい」「腰痛に怯えない、動ける身体を取り戻したい」など、私たちの専門的なアプローチやサポート内容の詳細は、以下のページからご確認いただけます。


リハマッチの整形外科リハビリの特長を見る

  • X
  • facebook
  • LINE

この記事の著者

光武裕司

光武裕司

理学療法士/福祉健康科学修士

プロフィール詳細

1998年大分県生まれ。大分大学を卒業後、研究を続けるため同大学大学院に進学。非常勤として介護老人保健施設に勤務しながら、生活期のリハビリテーションを中心に経験を積む。大学院では、バイオメカニクス分野を専攻し、鼡径部痛がある者へのスクワット動作に関する研究を行い、修士号を取得。現在は、回復期リハビリテーション病棟に勤務する傍ら、整形外科クリニックでも非常勤として勤めており、多角的な視点から、より早期退院・早期社会復帰を実現できるリハビリテーションを目指している。

この記事はリハマッチ監督チームにより監修されています

リハビリパートナー選び、
お手伝いします

あなたの症状、お悩みをお聞かせください。
一人ひとりのお悩みと状況に合わせた
セラピストを
コンシェルジュが厳選します。

  • お気軽にご相談ください マッチングまで無料
  • プラン・料金を相談して決められる
  • 介護施設法人からお申込み多数