要約
冬の入浴中に潜むヒートショックは、単なる寒さではなく 、急激な温度差による血圧の乱高下が脳梗塞等を招く現象です 。浴槽内死亡者数は約六千五百人と交通事故の三倍以上に達しており 、脱衣所の暖房 、四十一度以下の湯温 、十分以内の入浴 等の対策が不可欠です。よって、生活習慣を整え 、適切な予防で大切な命を守りましょう 。
冬の入浴に潜む危険とは?ヒートショックの原因と予防対策
寒い季節が近づいてくると「ヒートショックに注意しましょう!」とメディアで耳にしたり、目にしたりすることが増えてきます。それは、「お風呂で急に意識を失った」「朝トイレに行こうとしたら倒れてしまった」といったことが増え、重篤な症状を引き起こす可能性があるからです。
特に高血圧や動脈硬化などの基礎疾患がある方は、脳梗塞・心筋梗塞という人生を一変させてしまう病気の引き金になってしまいます。
今回は、ヒートショックが起こるメカニズム、対策を説明していきます。
ヒートショックとは
ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所へ移動するときに、温度の急な変化が身体にあたえるショックのことを言います。気温差の激しい場所を何度も行き来すると、血圧が大きく変動することで、心臓に負担がかかり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高くなります。
令和5年の厚生労働省人口動態統計1)によると、高齢者の交通事故による死亡者数が2150人であるのに対し、浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は6541人で、交通事故による死亡者数を3倍以上上回っています。
入浴中に亡くなる人の多くは、65歳以上の高齢者に多く、11月から4月の冬場に全体の7割が発生しておりますその原因がヒートショックである可能性が高いとされており、ヒートショックを防ぐ事は大きな病気を引き起こさないためにも重要となります。
ヒートショックのメカニズム
人の体は自律神経の働きによって、寒いときは体温を維持するために血管を収縮させ、暖かい環境では熱を放散するために血管を拡張します。この仕組みによって体温は一定に保たれています。しかし、急激な温度変化にさらされると、この調整が短時間で大きく働き、血圧や血流の状態が急激に変動します。
例えば冬場の入浴では、暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室に移動した際に血管が収縮し、血圧が上昇します。その後、入浴によって体が温まると血管が拡張し、血圧が低下します。このように短時間で血圧が大きく変動することが、ヒートショックの本質です。
この急激な変化は心臓や血管に負担をかけ、心筋梗塞や脳卒中の引き金となる可能性があります。さらに、めまいや意識障害を引き起こし、転倒や浴槽内で溺れるといった事故につながることもあります。
ヒートショックが発生しやすい時期と場所
ヒートショックは、急激な温度差が生じやすい環境で起こりやすく、特に冬場の住宅内で多く見られます。なかでも浴室やトイレは暖房設備が整っていないことが多く、室温が低くなりやすいため注意が必要です。
タイルなどの床面が冷えている場合は、体感温度もさらに低下します。こうした環境では、暖かい居室との温度差が大きくなりやすく、体への負担が増します。
また、ヒートショックは「寒さ」そのものではなく、「温度差」が大きい場面で起こりやすい点も重要です。一般的には、10℃以上の温度差がある場合はリスクが高まるとされており、特に冬場は注意が必要です。
同様の仕組みは、夏場に冷房の効いた室内から猛暑の屋外へ出る場合や、サウナの後に水風呂へ入る場合にも生じます。
いずれも急激な温度変化によって体に負担がかかる可能性があります。2014年の調査では2)、入浴中に心肺停止に至った高齢者の割合が高かった地域として、香川県、兵庫県、滋賀県、東京都などが報告されています。
一方で、北海道や東北地方のような寒冷地では、浴室やトイレに暖房設備が整っている住宅が多いことが、事故の発生を抑えている一因と考えられています。このことから、ヒートショックは「温度差」と「住環境」の影響が大きく、適切な対策によって予防できる可能性があるといえます。
ヒートショックの症状
ヒートショックでは、まず初期症状として、めまいや立ちくらみなどが現れることがあります。これは急激な血圧の変化によって脳への血流が一時的に低下することで起こります。軽度であれば、座る・横になるなど安静にすることで改善することもあります。
しかし、症状が進行すると、胸の痛み、動悸、脈の乱れ、強いふらつきや失神などが現れることがあります。これらは心筋梗塞や脳卒中などの重篤な疾患の前兆や発症に関連している可能性があります。
そのため、症状が強い場合や改善しない場合、あるいは「いつもと違う」と感じる異変がある場合には、無理をせず、速やかに医療機関を受診する、または救急要請を検討することが重要です。
ヒートショックになりやすい人の特徴
ヒートショックは誰にでも起こり得ますが、特に血圧や血管に関わる疾患がある方や、温度差が生じやすい生活環境にある方はリスクが高いとされています。
以下のチェック項目を参考に、ご自身の生活習慣や環境を振り返ってみましょう。
【ヒートショック危険度 簡易チェックシート】
- メタボ・肥満・高血圧・高脂血症・心臓・肺や気管が悪いと言われたことがある
- 自宅の浴室には暖房設備がない
- 自宅の脱衣室に暖房設備がない
- 一番風呂に入ることが多いほうだ
- 42度異常の熱いお風呂が大好きだ
- 飲酒後に入浴することがある
- 浴槽に入る前にかけ湯をしない、または簡単にすませるほうだ
- シャワーやかけ湯は肩や体の中心からかける
- 入浴前に水やお茶などの水分をとらない
- 一人暮らしである、または家族に何も言わずにお風呂に入る
上記項目で5個以上のチェックでヒートショック予備軍と考えられます。当てはまる項目が多いほど、ヒートショックの危険性が高く、注意が必要です3)。
ヒートショックの予防と対策
ヒートショックは、急激な血圧の変動を防ぐことで予防できると考えられています。そのためには、入浴時の温度差をできるだけ小さくし、体に負担の少ない入浴方法を心がけることが重要です4)。以下に、日常生活で実践できる主な対策を示します。
ヒートショックの対策
- 入浴前に脱衣所や浴室を温めましょう。
- 湯温は41度以下、お湯に浸かる時間は10分以内を目安にしましょう。
- 浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう。
- 食後すぐの入浴や、飲酒後の入浴は控えましょう。
- 睡眠薬・精神安定剤の服用後の入浴は特に注意しましょう。
- 入浴する前に家族に一声かけましょう。
特に高齢者では、入浴中の事故が心筋梗塞や脳卒中などの重篤な疾患につながる可能性があります。そのため、本人だけでなく家族も含めて、安全な入浴環境を整えることが重要です。
【浴室でぐったりしている人(溺れている可能性がある人)を発見した場合の対応方法】
- 大声で助けを呼び、周囲の人に応援を求める。可能であれば浴槽の栓を抜く。
- 安全を確保しながら救出を試みる。難しい場合は、顔が沈まないよう体勢を保つ。
- 反応があるか(声かけ・肩をたたくなど)を確認する。
- 反応がない場合は呼吸を確認する。
- 反応がなく、呼吸をしていない、または様子がおかしい場合は、すぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始する。
- 強く、速く、絶え間なく胸の中央を押し続ける。人工呼吸が難しい場合は、胸骨圧迫のみでも構いません。
まとめ
高齢者が浴槽で溺れてなくなる人の数は交通事故の何倍にもなります。その原因の一つにヒートショックがあるとされているため、メディアで注意喚起がされています。
ヒートショックは正しく理解し、入浴環境や生活習慣を見直すことで予防できる可能性があります。本稿で述べてきたような対策を日常生活の中で意識することが重要です。
脳梗塞や心筋梗塞は、その後の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。ヒートショックを防ぐためにも、高血圧や脂質異常症などの基礎疾患の管理を行い、日頃から体調管理に努めていきましょう。
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参考資料
- 交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!|政府広報オンライン:https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202111/1.html
- 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター「入浴中に心肺停止(CPA)状態におちいった全国9360件の高齢者データを分析」平成26年3月26日
https://www.tmghig.jp/research/release/cms_upload/press_20140326.pdf - リンナイ株式会社:熱と暮らし通信「危険度数の高い“ヒートショック予備軍”は約5割と多数」2016年10月26日
https://www.rinnai.co.jp/releases/2016/1026/images/releases20161026.pdf - 冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください! -自宅の浴槽内での不慮の溺水事故が増えています-|消費庁:
- https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/pdf/caution_009_181121_0001.pdf
