変形性膝関節症による膝の痛みは、「痛いから動かない」と過度に安静を続けると、筋力低下や体重増加を引き起こし、症状を悪化させる悪循環に陥ります。進行を防ぐためには、「1kgの減量が膝の負担を4kg軽減する」データに基づく体重管理のための食事療法や、太ももを鍛える運動が重要です。また、ヒールを避けてクッション性の高い靴を選び、インソールやサポーター、適切な長さの杖(痛む膝の反対側で保持)を正しく活用することが膝への負荷を物理的に軽減します。慢性的な痛みには20分を目安に温めて血行を促し、急性期の腫れ・熱感があるときは温めずに冷やすなど、専門家の視点による正しい自己管理が膝の寿命をのばす鍵となります。
はじめに
変形性膝関節症は、加齢やこれまでの膝への負担によって関節内にある軟骨の性質や形状が変化する病気です。その際、「膝が痛くて長い時間歩けない」、「階段がある場所には行けない」など、膝の痛みや動きにくさを訴える『声』をしばしば耳にします。
変形性膝関節症は、進行すると膝の痛みが強くなったり膝の変形が進んだりして、日々の生活が困難になり生活の質を低下させます。日本では、自覚症状がない人も含めると3,000万人が変形性膝関節症の所見を有するといわれています。そして、中高年の女性に多く見られる疾患です。
変形性膝関節症が進行した場合、手術などの治療方法が行われることもありますが、本記事では、変形性膝関節症の進行を遅らせるために、日常生活の中でできる対策をご紹介します。
変形性膝関節症で生じやすい悪循環
変形性膝関節症では、膝にかかる負担を減らすことが進行を遅らせるために重要です。その中で、しばしば起こしやすい悪循環があります。
変形性膝関節症は、安静にしていたら治るという病気ではありません。そのため、適した方法で、身体を動かして筋力を維持することや、適正な体重を管理することが、膝への負担を減らすためにとても重要になります。
日常生活で取り入れたい対策
適正体重を維持するための食事
体重の管理は、変形性膝関節症の対策の中でも最も大切なことの1つです¹⁾。なぜなら、体重が増加すると、歩くたびに膝にかかる負担も増加するからです。
体重を1㎏減らすことで、歩行時の1歩ごとに膝にかかる負担が4㎏軽減されるともいわれています²⁾。とはいえ、急激なダイエットは筋肉を落とし逆効果になることもあります。そのため、①筋肉を保つためのたんぱく質、②骨を作るためのカルシウム、ビタミンD(魚やキノコ類)、③炎症を抑えるEPAやDHAを多く含む青魚や炎症を和らげる抗酸化物質を含む緑黄色野菜などを、日々の食事で意識的に取り入れるようにしてください。
そして、糖質や脂質が多いお菓子や清涼飲料水を控えるようにしましょう。一度に間食をすべて禁止すると、ストレスにつながり長続きしないことも多いです。1日の間食の量を決める、1週間の中で間食をする曜日を決めるなど、自分に合った継続できる方法で、体重の管理を行うことをおすすめします。
膝にやさしい運動を継続する
変形性膝関節症の対策では、食事の管理と併せて運動を実施することが推奨されています³⁾。その際、膝への負担が少ない運動から取り入れることが大切です。以下に、膝への負担が少ない運動をいくつか紹介します。
水の中では浮力によって体重が支えられるため、膝への負担を軽減しながら運動することができます。陸上では痛みが出やすい方でも取り組みやすい運動です。
太ももの前にある筋肉(大腿四頭筋)は、膝を支えるうえで重要な役割を担っています。椅子に座った状態や寝た状態で膝を伸ばし、太ももに力を入れる運動は、膝への負担を抑えながら筋力を維持するのに役立ちます。
ウォーキングは手軽に取り組める運動の一つです。ただし、無理をすると痛みが強くなることもあるため、痛みのない範囲の距離や時間から始めましょう。坂道よりも平坦な道を選ぶことをおすすめします。
靴・装具・杖を上手に活用する
靴は歩行時の膝への負担に大きな影響を与えます。ヒールなど踵が高い靴は膝への負荷が大きくなると言われています⁴⁾。そのため、普段から膝への負担を考慮した靴選びはとても重要です。クッション性のある靴底で、自分の足に合ったサイズのものを選ぶようにしましょう。
インソール(中敷き)は、足や膝にかかる力の偏りを調整し、膝への負担を軽減する効果が期待できます。見た目はシンプルですが、足のどの部分を支えるのか、高さをどの程度調整するのかによって、歩きやすさや膝への負担は変わります。そのため、多くの場合は歩き方や立ち姿勢、足の状態などを確認しながら、一人ひとりに合わせて作製・調整します。インソールを選ぶ際には、専門家に相談することをおすすめします。
膝のサポーターには、柔らかい素材でできたものから、金属などで補強されたものまでさまざまな種類があります。サポーターは膝の安定性を高め、痛みの軽減に役立つことがあります⁵⁾。一方で、「ずれてしまう」、「皮膚がかぶれる」、「蒸れて不快に感じる」といった問題が生じることもあります⁶⁾。特に夏場は汗をかきやすく、不快感や皮膚トラブルが起こりやすくなります。そのため、一日中着け続けるのではなく、外出時や活動量が多いときに使用するなどの工夫も大切です。
- ▶自分の膝の状態に合ったものを選ぶことが重要です
- ▶購入や処方の際には、装着方法や注意点についても確認しておくと安心です
- ▶「着け方が合っているか不安」と感じたら、医療機関や専門家に相談しましょう
杖は膝への負担を軽減し、歩行を助けてくれる心強い道具です。基本的には、痛みのある膝と反対側の手で使用します。また、杖の長さも重要です。長すぎても短すぎても十分な効果が得られず、かえって姿勢が崩れてしまうことがあります。一般的には、まっすぐ立った状態で杖をつき、肘が少し曲がる程度の長さが目安とされています。不安な場合は、医療機関や福祉用具専門員などに相談することをおすすめします。
膝を温めて動きやすくする(温熱療法)
温熱療法とは、「温める」ことを意味します。温めることで、血行を促進し、筋肉の緊張をほぐします。そのため、慢性的(長期間にわたる)関節の動きにくさや痛みに対して効果的です。温めたタオルで膝を保温する、入浴しながら膝を温めるなどがあります。20分程度を目安に温めます。
炎症が生じている急性期には、冷やすことが大切です。急に腫れてきている、熱感があるなどの際には、温熱療法は控えてください。
専門家(リハビリ)を有効に活用しよう
変形性膝関節症をはじめ、身体に痛みが生じるととても不安だと思います。どんどん悪くなっていくのか、いつまでこの痛みが続くのかなど、心配は尽きません。様子をみることもとても大切な対応の1つだと思います。その上で、痛みが改善しない、あるいは強くなってきている場合や、日常生活のできること・やりたいことが制限されるなど生活の支障がある場合には、ぜひ専門家に相談してください。専門家に相談をして、ご自身の身体の状態を理解することで不安が軽減することがあります。
そして、適切な運動方法を始める際に学ぶことで、お家での日々の運動がより効果的になります。また、装具(インソールやサポーター)の選択の際にも、適切なものを選ぶことで、効果を高めることができます。必要なタイミングで専門家を活用することで、毎日の取り組みがより充実したものになり、膝への負担も軽減できると思います。
おわりに
最後に、変形性膝関節症の進行を遅らせるためには、「痛みがあるから安静に」では筋力の低下や、動かないことによる体重増加が原因で悪化する可能性があります。だからといって、「痛くても動きましょう」というメッセージではありません。
痛みが生じない状況(膝への負荷が少ないプールでの運動、杖や膝のサポーターを使用した状態での活動など)を設定することがとても大切です。その際に、装具選びや日々の運動メニューなど、必要に応じて専門職を頼っていただけると嬉しいです。そして、日々の生活を楽しんでいただけたらと願います。
- ✓変形性膝関節症は「安静にすれば治る」病気ではなく、適切に動き続けることが重要
- ✓体重1kg減で膝の負担が4kg軽減される——食事管理で適正体重を維持しよう
- ✓水中歩行・太もも筋トレ・平地ウォーキングなど、膝に負担の少ない運動を継続する
- ✓クッション性のある靴・インソール・サポーター・杖を正しく活用して膝の負荷を軽減する
- ✓慢性的な痛みには温熱療法(20分)が有効。急性期(腫れ・熱感)は冷やすこと
- ✓痛みが強い・生活に支障がある場合はリハビリ専門家に相談しよう
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- Rebecca F Moyer, Trevor B Birmingham, Dianne M Bryant, J Robert Giffin, Kendal A Marriott, Kristyn M Leitch. "Valgus bracing for knee osteoarthritis: a meta-analysis of randomized trials." Arthritis Care & Research. 67, no.4(Apr 2015):455-592. https://acrjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/acr.22472
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長引く膝の痛みや日常生活の不安でお悩みの方へ
変形性膝関節症などの「慢性的な痛み」は、我慢したり自己流で対処したりすることで、かえって症状を悪化させてしまうことがあります。リハマッチでは、整形外科疾患や慢性的な痛みのリハビリ経験が豊富な理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が、あなたの現在の膝の状態に合わせた適切な運動方法や、生活環境の工夫をサポートします。
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