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カテゴリー: 病気・疾患の知識
タグ: 健康, 予防, その他(8件)

パーキンソン病と上手に付き合うために知っておきたい「非運動症状」

こんな人に読んでほしい!
  • パーキンソン病と診断された方
  • パーキンソン病のご家族や身近な方を支えている方
  • 手の震えや歩きにくさ以外の症状について知りたい方
  • 便秘や睡眠、気分の変化とパーキンソン病との関係を知りたい方
この記事の要約

パーキンソン病は手の震えや歩きにくさ(運動症状)だけでなく、便秘や睡眠障害、気分の落ち込み、嗅覚低下といった「非運動症状」を伴う神経変性疾患です。
これらの非運動症状は、運動症状よりも数年前から先行して現れることがあり、日常生活の質(QOL)を低下させる大きな原因となります。
年齢や疲れのせいと自己判断せずに早期から主治医へ相談し、薬物療法と作業療法などのリハビリテーションを組み合わせることが、自分らしい生活の維持に繋がります。

1.はじめに

パーキンソン病について調べると、「手が震える」、「動きが遅くなる」、「筋肉がこわばる」、「バランスを崩しやすくなる」といった症状が紹介されていることが多くあります。
これらはパーキンソン病を代表する症状ですが、実はそれだけではありません。

近年では、便秘や睡眠のトラブル、嗅覚の低下、気分の落ち込み、不安など、体の動きとは直接関係のないさまざまな症状が、日常生活や生活の質に大きく影響することが分かってきました。
さらに、これらの症状の一部は、手の震えや歩きにくさといった運動症状よりも前から現れることもあります。

もちろん、便秘や睡眠障害だけでパーキンソン病と診断されるわけではありません。
しかし、「年齢のせい」、「疲れやストレスのせい」と思っていた体や心の不調が、実は病気と関係している場合もあります。
そのため、ご本人だけでなく、ご家族も「なぜこのような症状が出るのだろう」と戸惑うことは少なくありません。

この記事では、パーキンソン病で体の動き以外にも現れるさまざまな症状に焦点を当て、その原因や日常生活への影響、治療やリハビリテーションについて、最新の研究結果も交えながらわかりやすく解説します。

パーキンソン病の運動症状(手の震え・動作の遅さ・筋肉のこわばり・バランスの崩れ)と非運動症状(便秘・睡眠のトラブル・気分の落ち込み・嗅覚の低下・物忘れ)を対比した説明図
パーキンソン病では、体の動き以外にも症状が現れます

2.パーキンソン病とは

パーキンソン病は、脳の中で体をスムーズに動かすために必要なドーパミンという神経伝達物質を作る神経細胞が徐々に減少することで起こる神経変性疾患です1)。
加齢とともに発症しやすくなり、日本では高齢化に伴って患者数も増加しています。

代表的な症状として、安静時に手足が震える「振戦(しんせん)」、動作がゆっくりになる「無動」、筋肉がこわばる「固縮」、バランスを崩しやすくなる「姿勢反射障害」の四大運動症状が一般的に知られています。
そのため、「パーキンソン病は体が動きにくくなる病気」というイメージを持つ方も多いでしょう。

しかし近年では、パーキンソン病は体の動きだけでなく、睡眠や消化器、自律神経、精神面、認知機能など全身にさまざまな影響を及ぼす病気であることが分かってきました。
これらの体の動きとは直接関係のない症状は、医学的には「非運動症状」と呼ばれています。

非運動症状は、運動症状よりも早い時期から現れることがあり、ご本人も病気との関係に気付きにくいことが少なくありません。

また、日常生活の不便さや生活の質の低下には、運動症状以上に非運動症状が影響している場合もあります。
そのため、近年ではパーキンソン病を理解するうえで、非運動症状は非常に重要な症状として注目されています。

3.なぜ体の動き以外の症状が現れるのか?

パーキンソン病では、体の動きを調節するドーパミン神経細胞が減少するだけでなく、睡眠や気分、自律神経、認知機能などに関わる神経の働きにも変化が生じます。
そのため、手の震えや歩きにくさといった運動症状だけでなく、体の動きとは直接関係のない症状も現れます。

以前は、こうした症状は運動症状に伴って起こる二次的な問題と考えられていました。
しかし近年では、パーキンソン病はドーパミン神経細胞の減少だけでは説明できず、脳や体の様々な神経系に影響を及ぼす病気であることが分かってきました。

便秘や睡眠障害、気分の落ち込み、不安、嗅覚の低下など、体の動きとは直接関係のないさまざまな症状は、医学的に「非運動症状」と呼ばれ、近年ではパーキンソン病を理解するうえで欠かせない症状と考えられています2),3)。

さらに、こうした非運動症状の一部は、手の震えや歩きにくさなどの運動症状よりも前から現れることがあります。
例えば、便秘や嗅覚の低下、睡眠の異常などが数年前からみられ、後になってパーキンソン病と診断されるケースも報告されています。

もちろん、これらの症状だけでパーキンソン病と診断されるわけではありません。
しかし、「年齢のせい」、「疲れやストレスのせい」と思っていた不調が、病気と関係している場合もあります。
こうした症状について知っておくことは、体調の変化に気付き、早期発見や早期治療につながる可能性があります4)。

ドーパミンをつくる神経の働きが低下することで、体の動きだけでなく睡眠・気分・自律神経・消化・嗅覚・認知機能など全身に変化が生じる仕組みを表した説明図
パーキンソン病は、さまざまな体の働きに影響します

4.パーキンソン病でみられる主な非運動症状

非運動症状の現れ方には個人差があり、すべての方に同じ症状がみられるわけではありません。
ここでは、パーキンソン病で比較的よくみられ、日常生活にも影響を及ぼしやすい症状について紹介します。

代表的な症状の一つが便秘です。
パーキンソン病では、自律神経の働きが変化することで腸の動きが低下し、便秘がみられることがあります。
便秘は腹部の不快感や食欲の低下などにつながり、生活の質を低下させる原因の一つにもなります。
症状が続く場合は、早めに主治医へ相談することが大切です5)。

また、睡眠のトラブルもよくみられます。
寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、日中に強い眠気を感じるほか、眠っている間に大声を出したり、手足を動かしたりすることもあります。
十分な睡眠がとれないことで日中の疲労感や集中力の低下につながり、日常生活に影響を及ぼすことがあります6)。

さらに、気分の落ち込みや不安が現れることもあります。
「以前は楽しめていたことに興味が持てない」、「理由は分からないけれど不安になる」といった変化は、気持ちの問題ではなく、病気によって生じる症状の一つである可能性があります。
適切な評価や治療によって改善が期待できるため、一人で抱え込まず、主治医や医療専門職に相談することが大切です7)。

そのほか、においが分かりにくくなる(嗅覚障害)や、物忘れや注意力の低下などがみられることもあります。
これらは加齢による変化と思われがちですが、パーキンソン病と関係している場合があります。
外見からは分かりにくい症状だからこそ、「病気の一部として起こることがある」と理解することが、ご本人だけでなく、ご家族にとっても大切です8),9)。

パーキンソン病でみられる主な非運動症状として便秘・睡眠のトラブル・気分の落ち込みや不安・嗅覚の低下・物忘れや注意力の低下の5つを紹介する説明図
主な非運動症状

5.治療やリハビリテーションで大切なこと

パーキンソン病の治療では、薬によって不足したドーパミンを補うことが基本となります。
しかし、体の動き以外の症状については、薬だけですべて改善できるとは限りません。

そのため、一人ひとりの症状に合わせて、薬物療法とリハビリテーション、生活習慣の工夫を組み合わせることが大切です10)。

特に作業療法では、ご本人が「自分らしい生活」を続けられるよう支援します。
例えば、疲れにくい生活動作の方法を一緒に考えたり、睡眠や活動のリズムを整えたり、趣味や外出など社会参加を続けるための工夫を提案したりします。

また、不安や気分の落ち込みなどについても、必要に応じて医師や看護師、心理職などと連携しながら支援を行います。

近年の研究では、運動療法やリハビリテーションは体の動きを改善するだけでなく、気分や生活の質の維持・向上にも役立つことが報告されています11)。

生活動作の工夫・睡眠と活動のリズム・趣味や外出の継続・気分や不安へのサポート・生活環境の調整・多職種との連携を組み合わせ、症状に合わせて自分らしい生活を続けられるよう支援する様子を表した説明図
症状に合わせて、生活しやすい方法を一緒に考えます
本記事のまとめ
  • パーキンソン病では、手の震えや歩きにくさなどの運動症状が注目されがちだが、便秘や睡眠障害、気分の落ち込み、不安、嗅覚の低下など、体の動き以外にもさまざまな「非運動症状」が現れることがある。
  • これらは日常生活や生活の質(QOL)に大きく影響するだけでなく、運動症状よりも早い時期から現れる場合もある。
  • 「年齢のせい」、「気の持ちよう」と考えられがちな症状も、パーキンソン病によって起こることがある。
  • 気になる症状がある場合は、一人で抱え込まず、まずは主治医へ相談してみましょう。
  • 症状に応じて適切な治療やリハビリテーションにつながることで、より安心して自分らしい生活を続けることが期待できる。

参考文献
  1. Schenkman, M., Bowman, J. P., Gisbert, R. L., & Butler, R. B. (2020). 臨床神経科学とリハビリテーション. 水野昇・野村嶬・三谷章(監訳). 西村書店.
  2. Goldman, J. G., & Postuma, R. (2014). Premotor and non-motor features of Parkinson's disease. Current Opinion in Neurology, 27(4), 434–441. https://doi.org/10.1097/WCO.0000000000000112
  3. Peña-Zelayeta, L., Delgado-Minjares, K. M., Villegas-Rojas, M. M., León-Arcia, K., Santiago-Balmaseda, A., Andrade-Guerrero, J., Pérez-Segura, I., Ortega-Robles, E., Soto-Rojas, L. O., & Arias-Carrión, O. (2025). Redefining non-motor symptoms in Parkinson's disease. Journal of Personalized Medicine, 15(5), 172. https://doi.org/10.3390/jpm15050172
  4. Ahadiat, S.-A., & Hosseinian, Z. (2023). A look back at the prodromal findings in Parkinson's disease. Bulletin of the National Research Centre, 47, 167. https://doi.org/10.1186/s42269-023-01143-5
  5. Warnecke, T., Schäfer, K.-H., Claus, I., Del Tredici, K., & Jost, W. H. (2022). Gastrointestinal involvement in Parkinson's disease: Pathophysiology, diagnosis, and management. npj Parkinson's Disease, 8, 31. https://doi.org/10.1038/s41531-022-00295-x
  6. Dodet, P., Houot, M., Leu-Semenescu, S., Corvol, J.-C., Lehéricy, S., Mangone, G., Vidailhet, M., Roze, E., & Arnulf, I. (2024). Sleep disorders in Parkinson's disease, an early and multiple problem. npj Parkinson's Disease, 10, 47. https://doi.org/10.1038/s41531-024-00642-0
  7. Wang, Z., Wei, H., Xin, Y., & Qin, W. (2025). Advances in the study of depression and anxiety in Parkinson's disease: A review. Medicine, 104(10), e41674. https://doi.org/10.1097/MD.0000000000041674
  8. Fullard, M. E., Morley, J. F., & Duda, J. E. (2017). Olfactory dysfunction as an early biomarker in Parkinson's disease. Neuroscience Bulletin, 33(5), 515–525. https://doi.org/10.1007/s12264-017-0170-x
  9. Aarsland, D., Creese, B., Politis, M., Chaudhuri, K. R., Ffytche, D. H., Weintraub, D., & Ballard, C. (2017). Parkinson disease-associated cognitive impairment. Nature Reviews Disease Primers, 3, 17013. https://doi.org/10.1038/nrdp.2017.13
  10. Goldman, J. G. (2025). Non-motor symptoms and treatments in Parkinson's disease. Neurologic Clinics, 43(2), 291–317. https://doi.org/10.1016/j.ncl.2024.12.008
  11. Zhang, Y., Liu, S., Xu, K., Zhou, Y., Shen, Y., Liu, Z., Bai, Y., & Wang, S. (2024). Non-pharmacological therapies for treating non-motor symptoms in patients with Parkinson's disease: A systematic review and meta-analysis. Frontiers in Aging Neuroscience, 16, 1363115. https://doi.org/10.3389/fnagi.2024.1363115

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この記事の著者

鈴木 真

鈴木 真

作業療法士 Ph.D.

プロフィール詳細

愛知県名古屋市生まれ。作業療法士養成校卒業後、主に急性期や生活期を経験する。佛教大学保健医療技術学部作業療法学科を経て、現在は関西医療大学保健医療学部作業療法学科に勤務。大阪府立大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。

【研究者情報(Researchmap)】
https://researchmap.jp/makoto.s

この記事はリハマッチ監督チームにより監修されています

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