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カテゴリー: 健康・予防の知識
タグ: 脳梗塞, 病院, その他(5件)

若年性脳梗塞はなぜ起こる?若年層に多い原因疾患と初期サイン

こんな人に読んでほしい!
  • 20代や30代で突然の体調不良に不安を感じている当事者の方
  • ご家族が若くして倒れ、原因やこれからの生活に悩んでいるご家族
  • 若年層における血管のトラブルや体の異変について詳しく知りたい方
  • 働き盛りでストレスや疲労が溜まっており、自分の健康状態が気がかりな方

要約

若年層における脳の血管トラブルは中高年特有の長年の生活習慣病によるものだけでなく、卵円孔開存や動脈解離、もやもや病といった若者特有の原因によって引き起こされることが多いため、それぞれの病態を正しく理解しておくことが重要です。単なる疲れやストレスによる不調だと自己判断するのではなく、ろれつが回らない、手足に力が入らないといったささいな初期の異変を見逃さずに受診することが、早期発見と後遺症の軽減に直結します。


若い世代にも忍び寄る若年性脳梗塞の実態

脳梗塞は高齢の方に多いと思われがちな病気ですが、実は20代や30代といった若い世代でも決して他人事ではありません。一般的には40〜50歳未満で発症した脳梗塞を「若年性脳梗塞」と呼ぶことが多く、20代や30代で発症するケースもあります。

「自分はまだ若いから、血管が詰まるような重篤な病気にはならないはずだ」と思っていても、ある日突然発症して、その後の日常生活が一変してしまうことが少なくないのです。

若い世代にとって、この予期せぬ病気とは、どのようなものなのでしょうか。中高年のように長年の生活習慣が蓄積して動脈硬化が進んだ結果として起こるものとは少し異なり、生まれつきの体質や、思いがけない血管のトラブルが背景にあることが非常に多いのです。

これから長い人生を歩んでいく働き盛りの方々が、ある日突然手足の麻痺などを抱えることになれば、ご本人だけでなくご家族にとっても計り知れない不安と戸惑いが押し寄せることでしょう。

仕事はどうなるのか、治療費はどれくらいかかるのか、以前のように生活できるのかなど、考え始めると不安は尽きません。だからこそ、正しい知識を持ち、いざという時に落ち着いて行動できるよう備えておくことが何より大切になります。


中高年の病気とは異なる若年層特有の原因疾患について

脳梗塞が若い世代で発症する大きな理由として、生活習慣病以外の特殊な病気が隠れていることが挙げられます。ここでは、代表的な3つの原因と、見落としがちな生活習慣のリスクについてお話しします。

心臓の小さな穴が原因となる「卵円孔開存(PFO)」

お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんには、右心房と左心房の間に小さな穴が開いています。通常は生まれてすぐに自然と塞がるのですが、大人になってもこの穴が残っている状態のことを「卵円孔開存(PFO)」といいます。

実は健康な人でも4〜5人に1人の割合でこの穴が開いていると言われており、日常生活を送る上では全く問題がありません。心臓の機能自体に影響を与えることはほとんどないからです。

しかし、「エコノミークラス症候群」などで知られるように、長時間のデスクワークや水分不足によって足などの静脈でできた血の塊(血栓)が、咳き込んだ時や強くいきんだ時など、一時的に胸の圧が高くなった際に、この穴を通って右心房から左心房へ抜け、そのまま血流に乗って脳の血管へと運ばれてしまい、血管が詰まることがあります。これが若年性脳梗塞の原因の一つです。

首の血管が裂けてしまう「動脈解離」

スポーツをしている時や交通事故に遭った時、あるいは整体やマッサージなどで首を強くひねった時に、首の血管の内側が裂けてしまうことがあります。これを「動脈解離」と呼びます。まれに、整体やマッサージの後に発症したという報告もあります。

動脈解離は、血管の壁が裂けた部分に血の塊ができ、それが血流に乗って脳へ飛んでいくことで発症します。また、裂けた血管そのものが膨らんで周囲の神経を圧迫し、首の後ろに激しい痛みを感じるという特徴的な現れ方をすることもあります。

特に、激しい運動習慣のある若い方や、首に急激な負荷がかかる作業を行う習慣がある方では注意が必要です。普段と違う強い痛みを感じた場合は、決して我慢せずに医療機関を受診することが重要です。

国の指定難病でもある「もやもや病」

もやもや病とは、脳の太い血管が徐々に細くなり、血流を補うために細い異常な血管がたくさん作られる病気です。この細い血管のレントゲン写真を撮ると、タバコの煙のように「もやもや」と見えることから、この特徴的な名前がついています。

もやもや病は、国の指定難病にもなっている病気です。小児期に発症することが多い病気ですが、20代〜30代の若い大人になってから初めて見つかるケースも少なくありません。

この異常な血管は非常に細くて脆いため、十分な血流を維持できずに不足しやすく、結果として若年性脳梗塞を引き起こす原因となってしまいます。また、血管が破れて脳出血を起こすリスクも高いため、早期の診断と適切な管理が必要不可欠です。

見逃せない生活習慣のリスクとは

もちろん、特殊な病気だけでなく、日々の生活習慣が影響を及ぼしているケースも増えています。若いからといって無理を重ねていませんか?

偏った食生活によるコレステロール値の上昇、極端な運動不足、仕事や人間関係による過度なストレス、そして喫煙習慣などは、どれも血管の健康を少しずつ蝕んでいきます。若い時期からの生活習慣の乱れが、本来であれば中高年で起きるような血管の老化を早めてしまうのです。


見逃しやすい初期のサインとなる症状とは

若いからこそ、「最近仕事が忙しくて疲れているだけだろう」、「少し休めば治るはずだ」と片付けてしまいがちですが、以下のような異変には十分な注意が必要です。

  • 顔の片側がゆがむ、あるいは顔の半分だけがしびれる
  • ろれつが回らない、言葉がスムーズに出てこない、他人の言葉が理解できない
  • 片方の手や足に力が入らない、あるいは感覚が鈍くなる
  • 片方の目が見えにくくなる、物が二重に見える
  • 経験したことのないような激しい頭痛やめまいが突然起こる
  • 歩いている時によろけたり、まっすぐ歩けなくなったりする

これらの初期の症状は、本人が気づきにくいことも多く、周りにいるご家族や職場の同僚が「顔色が悪いよ」、「言葉がおかしいよ」と違和感を覚えて発見されることも珍しくありません。

一時的な症状で終わっても若年性脳梗塞のサインかも?

上記のような手足のしびれや言語の障害といった症状が数分から数十分で消えて、元の元気な状態に戻ることがあります。これを「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼びますが、「治ったからもう大丈夫」と自己判断してはいけません。

これは、本格的な脳梗塞の発作が間もなくやってくることを知らせる、体からの強烈な警告サインである可能性があります。TIAを起こした人の中には、数日以内に本格的な脳梗塞を発症する人もいます。「もしかして、あの不調は脳からのSOSだったのでは」と気づけるかどうかが、運命の分かれ道となります。


すぐに受診すべき目安と取るべき行動とは

少しでも「いつもと違う」と感じる不快な症状が現れたら、ためらわずに救急車を呼ぶか、すぐに専門の医療機関を受診してください。脳の細胞は、血流が途絶えるとわずかな時間でダメージを受け始めてしまいます。早期に適切な治療を開始できるかどうかが、後遺症の程度を軽くし、その後の人生を大きく左右する可能性があります。

受診の目安としては、「BE-FAST」を覚えておくと役立ちます。

BE-FAST

  • B:Balance(ふらつき)
  • E:Eyes(見え方の異常)
  • F:Face(顔のゆがみ)
  • A:Arm(手足の麻痺)
  • S:Speech(言葉の異常)
  • T:Time(時間を無駄にせず、すぐ受診する)

これらの症状が突然現れた場合は、様子を見ずに医療機関へ相談してください。

また、もし周りの大切な人がいつもと違う症状を見せていたら、迷わず「すぐに病院に行こう」と背中を押してあげてください。夜間や休日であっても、救急外来を受診することをためらってはいけません。時間が経過すればするほど、治療の選択肢が限られてしまうからです。


まとめ

今回は、若い世代にも起こり得る病気について、その特殊な原因や見逃してはいけない初期の症状についてお伝えしました。

働き盛り、あるいは子育て真っ最中の時期にこの病気を発症すると、仕事への復帰やこれからの長い人生における生活設計など、さまざまな不安や困難に直面することと思います。リハビリテーションの過程では、思い通りに体が動かないもどかしさや、精神的な落ち込みを経験することもあるでしょう。

しかし、決して一人で抱え込まないでください。早期に発見し、専門の医師や理学療法士、作業療法士による適切な医療やリハビリテーションを受けながら、行政が提供している自立支援医療や障害福祉サービスなどを上手に活用することで、自分らしい生活を取り戻している方はたくさんいらっしゃいます。

また、若年性脳梗塞を完全に防ぐことは難しい場合もありますが、禁煙、十分な睡眠、適度な運動、水分補給、健康診断での血圧・脂質・不整脈のチェックなどによって、リスクを減らせることがあります。

正しい知識を持つこととは、自分と家族の未来を守るための第一歩です。もし今、ご自身やご家族が体調について不安な思いを抱えているのであれば、地域の医療機関や保健所、専門の相談窓口に声を届けてみてください。

参考文献

  1. 鈴木 理恵子.若年者の脳卒中の鑑別疾患と治療.神経治療学.2019;36(3):135-139.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/36/3/36_135/_article/-char/ja/ 
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この記事の著者

村谷 元気

村谷 元気

理学療法士

プロフィール詳細

1988年山口県生まれ。専門学校を卒業後、理学療法士として医療機関に勤務。病院の立ち上げやチーム作り、マネジメントを経験。その後、訪問リハビリを経験し、自費リハビリ専門の会社に入職。施設長、エリアマネージャ―を経験したのち、社内の訪問リハビリ部門を立ち上げ、その責任者に就任。チーム作りやマネジメント、事業計画の作成と結果を出すための取り組みや経験を積む。現在は株式会社スリーワークにてセラピストの独立支援や副業のサポートを行っている。

この記事はリハマッチ監督チームにより監修されています

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