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カテゴリー: 健康・予防の知識
タグ: 健康, 予防, その他(5件)

糖尿病の足トラブルを防ぐフットケア ~足を守るために、今日からできる観察と靴選び~

こんな人に読んでほしい!
  • 糖尿病があり、足のしびれや冷えが気になり始めた方
  • 足の傷や靴ずれに気づきにくいと感じる方
  • 家族の足の見方やフットケアの方法を知りたい方
  • 糖尿病の合併症予防に関心がある方
  • 在宅療養を支えるケアマネジャー、ヘルパー、介護職の方
この記事の要約

糖尿病の三大合併症の一つである神経障害や血流障害は、足の感覚を鈍らせ、小さな傷や靴ずれから足病変(潰瘍・壊疽)を重症化させるリスクがあります。大切な足を守るためには、毎日の丁寧な「足の観察」に加え、深爪を防ぐ「スクエアカット」、たこや水虫を放置しない適切なケアが不可欠です。靴を履く前の異物確認や、出血に気づきやすい「白・薄い色の靴下」の着用など、今日から実践できる正しい靴選びと日頃のフットケアのポイントを詳しく紐解きます。

1.はじめに:糖尿病の足トラブルは「毎日見ること」で守れる

糖尿病がある方にとって、足のケアはとても大切です。糖尿病では、神経障害によって足の感覚が鈍くなったり、血流が悪くなったりすることで、小さな傷や靴ずれに気づきにくく、さらに傷が治りにくくなることがあります。

糖尿病では重症化すると足の切断につながることもあるため、不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、糖尿病があるからといって、必ず大きな足のトラブルが起こるわけではありません。

大切なのは、足の異変に早く気づくことです。毎日足を見ること、足に合った靴を選ぶこと、気になる変化があれば早めに医療者へ相談することで、多くの足トラブルは予防や早期対応につなげることができます。

本記事では、糖尿病による足病変を防ぐために知っておきたいフットケアの基本を、理学療法士の視点からわかりやすく解説します。糖尿病のあるご本人だけでなく、ご家族や在宅療養を支える支援者の方にも役立つ内容です。

2.なぜ糖尿病では足トラブルが起こりやすいのか

糖尿病性足病変とは、糖尿病がある方の足に生じる感染、潰瘍、組織の破壊などを含む足のトラブルを指します。糖尿病による足トラブルは、主に神経障害、血流障害、感染しやすさという3つの問題が重なることで起こりやすくなります。

①神経障害:痛みや傷に気づきにくくなる

高血糖の状態が長く続くと、足先の感覚神経が傷つき、足の感覚が鈍くなることがあります。すると、靴ずれ、小さな傷、熱さ、痛みなどが起きても気づきにくくなります。

これは、体が危険を知らせる「警報システム」が弱くなっている状態ともいえます。そのため、「痛くないから大丈夫」と思っていても、実は足に傷ができていることがあります。

また、神経障害は感覚だけでなく、足の筋肉の働きにも影響します。足の指を支える小さな筋肉、いわゆる骨間筋などが萎縮すると、足指の変形や足裏にかかる圧の偏りが生じやすくなります。その結果、たこや魚の目ができやすくなり、同じ場所に圧がかかり続けることで、傷や潰瘍につながることがあります。

②血流障害:傷が治りにくくなる

糖尿病がある方では、動脈硬化が進みやすく、足への血流が悪くなることがあります。足に十分な血液が届きにくくなると、傷を治すために必要な酸素や栄養が届きにくくなり、治癒に時間がかかります。

また、歩くとふくらはぎが痛む、足がつる、少し休むと楽になるという場合は、足の血流障害が隠れていることもあります。

禁煙のすすめ

喫煙は足の血流を悪くし、傷の治りにくさにも関係します。糖尿病の足トラブルを予防するうえで、喫煙は避けるべき重要な生活習慣です。足を守るためにも、禁煙について主治医に相談しましょう。

③感染しやすさ:細菌が入りやすく、広がりやすい

高血糖の状態では、体の抵抗力が低下し、傷口から細菌が入りやすくなることがあります。さらに、神経障害によって傷に気づくのが遅れると、感染が広がりやすくなります。感染が皮膚の奥まで進むと、潰瘍や壊疽につながることがあります。そのため、小さな傷であっても、糖尿病がある方では放置しないことが大切です。

糖尿病の足が危ない3つの理由
  • 「傷ができやすい」…足の変形や圧の偏りで皮膚が傷つきやすい
  • 「気づきにくい」…神経障害により痛みや異変を感じにくい
  • 「治りにくい」…血流障害で酸素・栄養が届かず回復が遅れる

3.足を守るための5つの基本ケア

糖尿病のフットケアは、特別なことを毎日完璧に行うものではありません。大切なのは、足の状態を知り、小さな変化に早く気づき、傷を作りにくい生活習慣を続けることです。

糖尿病足病変の予防においては、1)足病変リスクの確認、2)定期的な足の観察と診察、3)ご本人・家族がケアの知識を持つこと、4)適切な履物の使用、5)潰瘍につながるリスク因子への早期対応が重要とされています。

本記事では、日常生活で実践しやすいよう、次の5つに整理して紹介します。

ケアの内容 実践のポイント
① 自分の足のリスクを知る しびれ、冷え、足の変形、過去の傷、透析の有無を確認する。健診や通院時に、医師や看護師に足を見てもらう。
② 毎日、足を見る 足裏、指の間、爪、かかと、足の色・温度を見る。見えにくい場合は鏡や家族の助けを使う。
③ 足を清潔に保ち、皮膚を守る やさしく洗い、指の間までよく乾かす。乾燥しやすいかかとや足裏は保湿する。
④ 爪・たこ・水虫を放置しない 深爪や自己流の処置は避ける。巻き爪、厚い爪、たこ、魚の目、水虫がある場合は医療機関に相談する。
⑤ 足に合った靴・靴下を選ぶ 圧迫、摩擦、異物、裸足を避ける。靴の中を毎回確認し、白か薄い色の靴下を選ぶ(出血や浸出液に気づきやすい)。

この5つの基本ケアについて、4~8章で具体的な方法を順番に解説します。

4.自分の足の状態を知ろう

糖尿病があるすべての方が、すぐに高リスクというわけではありません。大切なのは、自分の足がどの程度注意が必要な状態かを知り、段階に合ったケアを続けることです。

目安として、しびれや感覚の鈍さがない方は毎日足を観察する習慣を身につけ、年に1回は医療者に足を確認してもらいましょう。しびれ・冷え・感覚の鈍さがある方は、傷や靴ずれに気づきにくくなることがあるため、観察と靴の確認をより丁寧に行うとよいでしょう。たこ・巻き爪・足の変形・血流障害を指摘されている方は自己流の処置を控え、医療機関やフットケア外来、必要に応じてリハビリ専門職へ相談しましょう。

糖尿病のある方が自分の足のリスクレベルを確認するためのチャート図
自分の足の状態を確認するチャート

5.毎日、足を見る

フットケアの出発点は「毎日足を見ること」です。感覚が鈍くなっている方は、痛みを頼りにすると傷を見逃すことがあります。入浴後や就寝前など、時間を決めて観察しましょう。見るだけでなく、手で触れて、左右の温度差や硬くなっている部分を確認することも役立ちます。

視力が低下している方や、足裏が見えにくい方は、鏡を使う、家族に見てもらう、訪問看護や訪問リハビリの場面で確認してもらうなど、無理なく続けられる方法を選びましょう。

足裏・指の間・かかとなど足の観察ポイントを示したイラスト
毎日の足の観察ポイント

6.清潔と保湿で皮膚を守る

糖尿病による神経障害の影響で汗をかきにくくなると、足の皮膚が乾燥しやすくなります。皮膚が乾燥してひび割れると、そこから細菌が入り、感染の原因になることがあります。

足を洗うときは、強くこすりすぎず、石けんをよく泡立ててやさしく洗いましょう。洗ったあとは、指の間まで水分をよく拭き取ることが大切です。指の間に水分が残ると、皮膚がふやけたり、水虫などの原因になったりすることがあります。

乾燥しやすい足裏やかかとには、入浴後など清潔な状態で保湿クリームを薄く塗りましょう。ただし、指の間は蒸れやすいため、保湿クリームを多く塗り込まないようにしましょう。

清潔・保湿のポイント
  • 石けんを泡立てて、やさしく洗う
  • 指の間まで水分をよく拭き取る
  • 足裏・かかとには保湿クリームを薄く塗る
  • 指の間には保湿クリームを塗り込みすぎない(蒸れ注意)

清潔と保湿の目的は、足をきれいにすることだけではありません。皮膚を傷つきにくい状態に保ち、ひび割れや感染の入り口を作らないことが大切です。

7.爪・たこ・水虫を放置しない

爪のトラブル、たこ、魚の目、水虫は、糖尿病性足病変の入り口になりやすい変化です。感覚が鈍くなっていると、痛みが少ないまま皮膚や爪の異常が進み、傷や感染につながることがあります。以下の3つのポイントに注意しましょう。

①爪は「スクエアカット」が基本

爪は短く切りすぎず、先端をまっすぐ切るスクエアカットが基本です。深爪や、爪の角を丸く切り込みすぎる切り方は、巻き爪や陥入爪の原因になることがあります。

血流障害があると、爪の変色、肥厚、変形が起こりやすく、切りにくい状態になることがあります。すでに爪が厚い、強く巻いている、黄色や黒に変色している、自分で切るのが難しい場合は、無理に切らず、フットケア外来、皮膚科、形成外科などに相談してください。

爪の正しいスクエアカット(先端をまっすぐ切る方法)の説明図
スクエアカット:先端をまっすぐ、角を切り込みすぎない

②たこ・魚の目は自分で削らない

たこや魚の目は、足の一部に圧力や摩擦が集中しているサインです。放置すると、その下に傷ができたり、潰瘍につながったりすることがあります。

注意:自己処置は危険です

自分でカッターやはさみを使って削るのは危険です。感覚が鈍くなっていると、削りすぎて傷を作っても気づきにくいことがあります。たこや魚の目が気になる場合は、医療機関やフットケア外来に相談しましょう。必要に応じて、靴やインソールの見直しも大切です。

③水虫を放置しない

水虫はかゆみがあるとは限りません。足の指の間が白くふやける、皮がむける、じゅくじゅくする、爪が白や黄色に濁る、厚くなるといった変化がある場合は注意が必要です。

水虫を放置すると、皮膚の小さな傷から感染が起こったり、爪に広がって爪が厚く変形したりすることがあります。自己判断で市販薬を使い続けるのではなく、症状が続く場合は皮膚科などで相談しましょう。

8.足に合った靴と靴下を選ぶ

靴は「入るかどうか」だけでなく、「足を守れるか」で選ぶことが大切です。感覚が低下している足では、靴が少し合わないだけでも靴ずれや潰瘍の原因になることがあります。

糖尿病がある方の靴選びチェックポイント
  • 新しい靴は最初から長時間履かず、短時間から試す
  • 履いた後は足に赤みや靴ずれが出ていないか確認する
  • 靴を履く前に毎回、手を中に入れて小石・縫い目・破れを確認する
  • 室内でも裸足は避け、靴下や室内履きを使用する
  • 白や薄い色の靴下は出血・浸出液に気づきやすいのでおすすめ
  • 湯たんぽ・アンカ・電気毛布・カイロなど直接足に触れる暖房器具は低温やけどに注意
糖尿病のある方のための靴選びと靴下選びのポイントを示したイラスト
足を守る靴・靴下の選び方

9.すぐに受診したい足のサイン

足の変化を見つけたとき、「少し様子を見よう」と放置しないことが大切です。特に次のようなサインがある場合は、自己判断で市販薬を塗ったり、たこや爪を削ったりせず、早めに医療機関へ相談しましょう。

すぐに受診すべき足のサイン(傷・赤み・腫れ・変色・膿など)を示したイラスト
こんなサインがあればすぐに受診を

10.家族・介護者・支援者ができること

糖尿病の方が自分で足を観察するのが難しい場合、家族や支援者の目が大きな力になります。視力低下、体の硬さ、認知機能の低下、独居などがある場合は、本人だけに任せず、周囲が「一緒に確認する」仕組みをつくることが大切です。

支援者ができること 具体的な行動
足の観察をサポートする 入浴後や更衣時に、足裏・指の間・爪・かかとを確認し、赤み・傷・腫れ・変色などの変化をメモする。
靴や靴下を確認する 外出前に、靴の中の小石や異物、破れ、硬い出っ張りがないか一緒に確認する。靴下に血液や浸出液がついていないか確認する。
早めの受診につなげる 傷、赤み、腫れ、熱感、膿、黒っぽい変色、爪の異常などを見つけた場合は、自己判断せず医療機関へ相談する。
ケアの役割分担を決める 爪切りや皮膚処置は行える範囲を確認し、必要に応じて看護師やフットケア外来に相談する。

支援で大切なのは、家族や介護職がすべてを行うことではありません。足の変化に早く気づき、必要なときに医療者へつなげることです。

ヘルパーや介護職の方が行えるケアの範囲は、制度や事業所のルール、利用者の状態によって異なります。爪切りや皮膚処置で迷う場合は、担当のケアマネジャー、訪問看護師、主治医に確認しておくと安心です。

11.理学療法士・作業療法士に相談できること

理学療法士や作業療法士は、足の傷を診断したり、爪や皮膚の処置を行ったりする職種ではありません。しかし、足の感覚低下や筋力低下によって起こる「歩きにくさ」、「つまずきやすさ」、「転びやすさ」に対して、身体機能や生活環境の面から支援できます。

たとえば、足の筋力、足首の動き、バランス、歩き方、靴の影響、自宅内の段差やマットなどを確認し、足に負担が集中しにくい動き方や、自宅で安全に続けられる運動を一緒に考えます。足裏の圧が一部に集中している場合は、医師や義肢装具士と連携してインソールや靴の調整を検討することもあります。

傷がある場合は、医師・看護師と連携しながら、傷に体重がかかり続けないような移動方法、補助具の使い方、生活動作の工夫を考えます。「歩かないこと」だけが答えではありません。傷を守りながら、体力や生活機能を落としすぎないようにすることも大切です。

在宅療養では、家族、ケアマネジャー、ヘルパー、訪問看護師、訪問リハビリが情報を共有し、足の変化に早く気づける体制をつくることが重要です。足を守るためには、本人だけで頑張るのではなく、医療・介護のチームで支える視点が大切です。

12.おわりに:「見る・触る・相談する」を習慣に

糖尿病の足トラブルは、急に大きな問題として始まるとは限りません。小さな傷、乾燥、靴ずれ、爪の変化、たこ、冷えなど、日常の中の小さなサインから始まることがあります。

だからこそ、毎日足を見ること、手で触れて変化を確かめること、無理に爪やたこを処置しないこと、足に合った靴を選ぶことが大切です。これらは難しい特別なケアではなく、自分の足で歩き続けるための大切な生活習慣です。

不安を抱え込みすぎる必要はありません。気になる変化に早めに気づき、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、ケアマネジャーなどの専門職と相談しながら、足を守る行動を続けていきましょう。

本記事のまとめ
  • 糖尿病の足トラブルは、神経障害・血流障害・感染しやすさの3つが重なって起こりやすい
  • 毎日足を見て・触れて変化を確認することが、フットケアの出発点
  • 爪は「スクエアカット」、たこ・魚の目・水虫は自己処置せず医療機関へ
  • 靴を履く前は毎回中を確認。白・薄い色の靴下で出血に気づきやすく
  • 家族・支援者も「観察・確認・受診へのつなぎ」で大きな力になれる
  • 気になる変化は早めに医師・看護師・リハビリ専門職へ相談を

参考文献
  1. 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病診療ガイドライン2024,第11章 糖尿病性足病変.南江堂,2024.
  2. International Working Group on the Diabetic Foot:IWGDF Guidelines on the prevention and management of diabetes-related foot disease,2023 update.
  3. 一般社団法人日本フットケア学会 編:フットケアと足病変治療ガイドブック 第3版.医学書院,2017.
  4. 糖尿病フットケアノート(国立国際医療研究センター 2023年12月改訂)
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この記事の著者

濵地 望

濵地 望

理学療法士、博士(保健医療学)

プロフィール詳細

2009年に理学療法士免許を取得。医療機関や介護老人保健施設で8年間勤務し、臨床現場で幅広い対象者のリハビリテーションに携わる。2017年より大学教員として教育・研究活動を開始し、現在は福岡県にある令和健康科学大学に勤務している。学生教育に携わりながら、循環器疾患や生活習慣病予防に関わるリハビリテーションを専門とし、心不全患者の運動時血圧応答や血圧変動、安全な運動処方に関する研究に取り組んでいる。

座右の銘は「完璧より、前進。」教育・研究・日々の生活の中で、丁寧に考える姿勢を大切にしながらも、迷いすぎて立ち止まるのではなく、一歩ずつ形にしていくことを心がけ、日々歩みを進めている。

【研究者情報(Researchmap)】
https://researchmap.jp/hamachi

この記事はリハマッチ監督チームにより監修されています

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