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橈骨遠位端骨折のリハビリメニューと回復を早めるコツ:日常生活で気をつけるべきこと

こんな人に読んでほしい!
  • 橈骨遠位端骨折後に、いつから手首を動かしてよいのか迷っている方
  • ギプス固定中や手術後に、どのようなリハビリを行えばよいのか知りたい方
  • 橈骨遠位端骨折後の回復に、どのくらいの期間がかかるのか知りたい方
  • 家事や仕事など、日常生活へ復帰する際の注意点を知りたい方
この記事の要約

橈骨遠位端骨折のリハビリは、ギプス固定中から指・肘・肩を動かしてこわばりや腫れを防ぎ、
主治医の許可後に手首の可動域練習やダーツ投げ運動、握力訓練へと段階的に進めることが重要です。
受傷後2ヶ月頃までは痛みや制限が残りやすいものの多くは6ヶ月以内に改善します。
重い物を持つ作業や手をつく動作は骨癒合を確認しながら慎重に再開し、焦らず段階的に生活復帰を目指すことが早期回復の鍵となります。

はじめに

橈骨遠位端骨折とは、転んだ際に手をついた衝撃などによって受傷することの多い、手首の骨折です。

手は、食事・着替え・仕事・家事など、日常生活のほとんどの場面で使用します。そのため、骨折した後に「いつから動かしてよいのか」「何をしてはいけないのか」「どのくらいで元の生活に戻れるのか」と疑問に思う方も多いと思います。
受傷された方のご家族にとっても、どこまで手伝うべきなのか迷う場面があるかもしれません。

橈骨遠位端骨折のリハビリメニューでは、骨折部を守ることと、必要な時期に手指や手首を動かしていくことの両方が重要です。単に「早く動かせばよい」「骨がつくまで何もしない」と考えるのではなく、治療方法や骨折の安定性に合わせて進める必要があります。

今回は、橈骨遠位端骨折の回復過程を基準にしながら、どのようなリハビリメニューを行うのか、日常生活の中で回復を妨げないためにどのような点に注意すればよいのかを、現在の科学的根拠に基づきながら解説します。

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橈骨遠位端骨折とは?

橈骨は、前腕にある2本の骨のうち親指側に位置する骨です。その橈骨が手首に近い部分で折れるものを「橈骨遠位端骨折」と呼びます。
典型的には、転倒した際に手のひらを地面についてしまったときに生じます。1-2)

特に中高年以降では、骨粗鬆症によって骨が弱くなっていることを背景に、比較的小さな転倒でも受傷することがあります。日本整形外傷学会では、橈骨遠位端骨折は上腕骨近位部骨折、脊椎圧迫骨折、大腿骨近位部骨折と並び、骨粗鬆症に関連する「4大骨折」の一つとして紹介されています。1)

一方で、若い方でもスポーツ中の転倒や高所からの転落、交通事故など、大きな力が加わることで受傷します。つまり、高齢者だけに起こる骨折ではありません。1-2)

治療方法には、ギプスや装具で固定する保存療法と、プレートやスクリューなどで骨を固定する手術療法があります。骨のずれが少なく安定している場合には保存療法が選択されることがあり、骨のずれが大きい場合や、骨折が関節面に及び整復した位置を保ちにくい場合には手術が選択されることがあります。1-2)

そのため、橈骨遠位端骨折のリハビリメニューは、すべての方が同じ時期に同じ内容を行うわけではありません。どのような治療を受けたのか、骨折部がどの程度安定しているのかを確認しながら進めることが大切です。

橈骨遠位端骨折の一般的な経過

橈骨遠位端骨折では、「骨がつく時期」と「手首を元のように使える時期」は同じではありません。保存療法では、骨折の状態に応じて数週間の固定が行われ、一般的には4〜6週間程度の固定後に手首の運動を開始することが多いとされています。3) ただし、近年は骨のずれが少なく安定した骨折では、より短い固定期間で手首の運動を開始することも検討されています。4)

一方で、固定が外れた時点で手首の動きや握力がすぐに元通りになるわけではありません。固定によるこわばりや腫れ、痛み、筋力低下などが残っているため、その後も段階的なリハビリが必要になります。

橈骨遠位端骨折後の129人を1年間追跡した研究では、受傷後2カ月頃までは動作時の痛みや日常生活の制限が強い方が多いものの、その後は徐々に改善し、回復の多くは6カ月以内にみられました。一方で、一部の方では1年後にも痛みや動かしにくさが残ることが報告されています。5)

そのため、「6週間経ったから治った」と考えるのではなく、骨折の治癒を確認しながら、数カ月かけて手首の動きや筋力、日常生活での使いやすさを取り戻していくと考えるのが良いでしょう。橈骨遠位端骨折のリハビリメニューでは、この回復過程を踏まえて負荷を調整することが重要です。

いつから動かし始めてよいのか

それでは、多くの方が気になる「いつから動かしてよいのか」について解説します。

結論としては、手指・肘・肩などの骨折部以外の関節と、骨折した手首そのものでは、動かし始める時期を分けて考える必要があります。また、手首の運動開始時期は保存療法と手術療法でも異なります。

2024年に発表された橈骨遠位端骨折のリハビリに関する臨床実践ガイドラインでは、手術によって骨折部が安定して固定された場合、術後3週間以内から手指・手関節・肘・肩の自動運動と、軽い日常生活動作を開始することが推奨されています。3)

プレート固定後の早期運動と遅い時期からの運動を比較した研究をまとめた報告でも、早期から運動を行った群では、6週間頃の手首の機能や握力、可動域などが良好でした。一方で、時間の経過とともに差は小さくなり、1年後には大きな差を認めない項目も多くなっています。6-7)

つまり、早期運動のメリットは「無理に動かせば最終的にもっと良くなる」ということではなく、回復の早い時期に手を使いやすい状態へ戻すことにあると考えられます。

保存療法では、ギプスなどで手首を固定している間は、原則として手首そのものを自己判断で動かしません。安定した骨折では早めに固定を外し、着脱可能な装具へ変更して運動を開始する場合もありますが、骨折のずれ方や経過によって判断が異なります。4)

橈骨遠位端骨折のリハビリを始める際は、「何週経ったから大丈夫」と自分で判断するのではなく、主治医や担当する理学療法士・作業療法士から手首を動かしてよい時期を確認しましょう。

橈骨遠位端骨折後のリハビリメニュー

橈骨遠位端骨折のリハビリメニューは、回復段階によって目的が変わります。大まかには、骨折部を守りながら周囲の動きを保つ時期、手首の可動域を取り戻す時期、筋力や日常生活動作を取り戻す時期へと進んでいきます。3)

代表的な内容は、以下のとおりです。

時期主な目的リハビリメニューの例
固定・保護の時期 骨折部を守る/腫れや周囲関節のこわばりを防ぐ 手の指の運動、肘や肩の運動、患肢の挙上、軽い日常生活動作
手首を動かし始める時期 手首・前腕の可動域を取り戻す 手関節の運動、前腕の回内・回外、腱を動かす運動
筋力・生活復帰の時期 握力や作業能力を取り戻す タオルや柔らかいボールを握る運動、ダーツ投げ運動、家事や仕事を想定した動作練習

実際には、これらの時期は明確に分かれるわけではなく、骨折の安定性や痛み・腫れ、手首の動きに応じて少しずつ重なりながら進みます。次に、それぞれの運動について詳しくみていきましょう。

ギプス中にも動かしたほうが良い場所

手首をギプスで固定していると、「腕全体を動かさないほうが良い」と考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、固定しているのは骨折した手首を守るためであり、指や肘、肩まで動かさないようにする必要はありません。

英国手外科学会のガイドラインでは、固定中も指でしっかり握れる状態を保ち、手指・母指・肘・肩の動きを失わないようにすることが勧められています。また、セルフケアやタイピングなどの軽い動作では、固定した手も無理のない範囲で使用することが推奨されています。8)

固定中に意識しておきたい運動

  • ▶指をゆっくり曲げ伸ばしし、可能な範囲でグー・パーを行う
  • ▶親指を他の指へ順番に触れるように動かす
  • ▶肘の曲げ伸ばしを行う
  • ▶肩を痛みのない範囲で上げたり回したりする

また、橈骨遠位端骨折では手や指の腫れがみられることがあります。患側の手を心臓より高い位置に保つことや、許可された手指運動を行うことは、腫れの管理にもつながります。3)

一方で、ギプスの中で手首を無理に動かしたり、重い物を持ったり、手をついて体重をかけたりすることは避けましょう。2,8)

根拠のあるリハビリメニュー

手首を動かしてよい時期になった後の橈骨遠位端骨折のリハビリメニューでは、単に手首を曲げ伸ばしするだけでなく、手指から肩までを含めて段階的に運動することが推奨されています。

2024年の臨床実践ガイドラインでは、骨折の治療方法と安定性に合わせて、自動運動・他動運動、腱滑走運動、運動制御の練習、日常生活に近い機能的な運動、段階的な筋力訓練などを行うことが勧められています。3)

手首を動かす運動としては、以下のような方向があります。

  • ▶手のひら側へ曲げる動き(掌屈)と、手の甲側へ反らす動き(背屈)
  • ▶親指側へ傾ける動き(橈屈)と、小指側へ傾ける動き(尺屈)
  • ▶手のひらを下へ向ける動き(回内)と、上へ向ける動き(回外)

特に前腕の回内・回外は、ドアノブを回す、鍵を使う、食器を扱うといった日常生活に関わる動きです。手首の曲げ伸ばしだけでなく、前腕の回転も少しずつ取り戻していくことが大切です。

また、手術で安定した固定が得られている場合には、ガイドラインでは術後2週頃から、タオルやパテを軽く握るような負荷の低い筋力訓練を段階的に開始することも推奨されています。3) 保存療法では、骨折の安定性や固定状態によって条件が異なるため、自己判断で握力トレーニングを始めるのではなく、開始時期を確認してください。

橈骨遠位端骨折のリハビリメニューでは、運動の回数を増やすことよりも、骨折部の状態に合った負荷を選ぶことが重要です。運動後に痛みや腫れが大きく増える場合には負荷が強すぎる可能性があります。
強く我慢して動かすのではなく、症状の反応をみながら少しずつ範囲や負荷を増やしていきましょう。

ダーツ投げ運動の実施方法

橈骨遠位端骨折のリハビリメニューとして紹介されることのある運動の一つに、「ダーツ投げ運動(Dart-Thrower's Motion)」があります。

ダーツ投げ運動とは、名前の通りダーツを投げるときのように、手首を斜め方向へ動かす運動です。具体的には、手首を少し反らしながら親指側へ傾けた位置から、手のひら側へ曲げながら小指側へ動かします。

私たちの手首は、日常生活の中で単純に曲げ伸ばしするだけではなく、このような斜めの方向にも多く動きます。そのため、ダーツ投げ運動は日常生活に近い手首の動きを練習する方法の一つとして用いられています。9)

ダーツ投げ運動の行い方

  • ▶椅子に座り、前腕を机の上などに置いて力を抜きます
  • ▶手首を少し反らしながら、親指側へ傾けます
  • ▶そこから、小指側へ向かって手首を斜め下へゆっくり動かします
  • ▶痛みのない範囲で元の位置へ戻し、同じ動きを繰り返します

最初から大きく動かしたり、重りを持って行ったりする必要はありません。

橈骨遠位端骨折後の患者さん24人を対象にしたランダム化比較試験では、ダーツ投げ運動を行った群と通常の手首の運動を行った群では、可動域や痛み、手の機能には差が認められませんでしたが、ダーツ投げ運動を行った群では、自主トレへの満足度や意欲が高かったことが報告されています。9)

そのため、ダーツ投げ運動は「これを行えば特別に早く治る運動」というよりも、日常生活に近い動きを取り戻すための選択肢の一つとして考えるのが良いでしょう。

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生活復帰とリハビリテーション

橈骨遠位端骨折のリハビリでは、運動の時間だけでなく、日常生活の中で少しずつ手を使うことも重要です。骨折部の安全性が確認された後は、軽い生活動作から患側の手を使い始め、徐々に負荷の高い作業へ戻していきます。3,8)

129人を追跡した研究によると、身の回りの動作や家事により、仕事や余暇活動よりも早く回復する傾向がみられました。一方で、約4.5kgの物を持つことや、椅子から手をついて立ち上がる動作により、回復に時間がかかる傾向がみられました。4)

生活の中では、次のように負荷を段階的に考えると分かりやすいでしょう。

  • ▶食事、洗顔、着替え、タイピングなどの軽い動作から始める
  • ▶食器を運ぶ、衣類をたたむ、簡単な調理などへ少しずつ広げる
  • ▶重い鍋や買い物袋を持つ、雑巾を強く絞る、手をついて体重を支える動作は、骨折の治癒と筋力の回復を確認してから行う

ご家族が介助する場合も、すべての動作を代わりに行う必要はありません。重い物を持つなど負担の大きい作業は手伝いながら、本人が安全にできる軽い動作は少しずつ行ってもらうことが、生活復帰につながります。

仕事への復帰時期も、骨折から何週間経ったかだけでは決まりません。デスクワークと、重い物を持つ仕事や手を繰り返し使う仕事では、復帰のタイミングが異なります。
必要に応じて、仕事内容の一部を変更する、重い作業を一時的に避けるなど、段階的な復職を検討することも大切です。

橈骨遠位端骨折のリハビリメニューは、自主トレだけで完結するものではありません。最終的には、食事や家事、仕事、趣味など「自分が再び行いたい動作」へつなげていくことが目標です。
焦って負荷を上げるのでも、必要以上に使わずに過ごすのでもなく、回復段階に合わせて生活の中へ手を戻していきましょう。

本記事のまとめ
  • ✓橈骨遠位端骨折は、手首に近い橈骨が折れる骨折で、骨粗鬆症に関連する「4大骨折」の一つとして知られています。
  • ✓保存療法と手術療法があり、骨折のずれや安定性、関節面への影響などによって治療方法が選択されるため、リハビリの開始時期も一人ひとり異なります。
  • ✓橈骨遠位端骨折のリハビリでは、固定中から手指・肘・肩を動かし、手首は医師やセラピストから許可された時期に段階的に動かしていくことが大切です。
  • ✓手首の可動域練習、握力訓練、ダーツ投げ運動などは、骨折の安定性と痛み・腫れの反応をみながら進めましょう。
  • ✓日常生活や仕事への復帰は、軽い動作から徐々に負荷を上げ、重い物を持つ・手をつくといった動作は回復を確認しながら再開することが重要です。

参考文献
  1. 一般社団法人日本整形外傷学会. 「橈骨遠位端骨折」. https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip23.html
  2. 公益社団法人日本整形外科学会. 「橈骨遠位端骨折(コレス骨折・スミス骨折)」. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/distal_radius_fracture.html
  3. Mehta SP, Karagiannopoulos C, Pepin ME, et al. Distal Radius Fracture Rehabilitation: Clinical Practice Guidelines. J Orthop Sports Phys Ther. 2024;54(9):CPG1-CPG78.
  4. de Bruijn MAN, van Ginkel LA, Boersma EZ, et al. Cast immobilization duration for distal radius fractures, a systematic review. Eur J Trauma Emerg Surg. 2024;50(4):1621-1636
  5. MacDermid JC, Roth JH, Richards RS. Pain and disability reported in the year following a distal radius fracture: a cohort study. BMC Musculoskelet Disord. 2003;4:24.
  6. Gutiérrez-Espinoza H, Araya-Quintanilla F, Olguín-Huerta C, et al. Effectiveness of early versus delayed motion in patients with distal radius fracture treated with volar locking plate: A systematic review and meta-analysis. Hand Surg Rehabil. 2021;40(1):6-16.
  7. Lee JK, Yoon BH, Kim B, et al. Is early mobilization after volar locking plate fixation in distal radius fractures really beneficial? A meta-analysis of prospective randomized studies. J Hand Ther. 2023;36(1):196-207.
  8. British Society for Surgery of the Hand. DRFs Rehabilitation. https://www.bssh.ac.uk/professionals/drfs_rehabilitation.aspx
  9. Kaufman-Cohen Y, Levanon Y, Friedman J, Yaniv Y, Portnoy S. Home exercise in the dart-throwing motion plane after distal radius fractures: A pilot randomized controlled trial. J Hand Ther. 2021;34(4):531-538.

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この記事の著者

虎岩 太郎

虎岩 太郎

理学療法士/大学院修士課程修了

プロフィール詳細

理学療法士として整形外科領域を中心に臨床経験を積み、現在は整形外科クリニックにて、運動器疾患を対象とした外来リハビリテーションに従事している。

大学院修士課程を修了し、大学院で培った運動器理学療法や研究に関する知識も活かしながら、科学的根拠に基づいたリハビリテーションの実践を大切にしている。

また、院内外での研修や教育活動にも携わっており、臨床・研究・教育のそれぞれの視点を大切に活動している。

この記事はリハマッチ監督チームにより監修されています

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