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ラクナ梗塞とは?気づきにくい小さな脳梗塞と生活への影響

こんな人に読んでほしい!
  • 健康診断で「血圧が高い」と言われたことがある方
  • 最近、歩きにくさや転びやすさが気になっている方
  • 「物忘れ」や「段取りの悪さ」が年齢のせいか気になっている方
  • 脳梗塞や認知症を予防したいと考えている方

この記事の要約

ラクナ梗塞は、脳の細い血管が詰まることで起こる小さな脳梗塞で、症状が目立たないこともあります。しかし、数が重なると、歩行障害や脳血管性認知症につながる可能性があります。歩きにくさや物忘れは、単なる加齢ではなく、脳血管の障害が関係することもあるため、早期発見が重要です。そのため、家庭での血圧管理、味噌汁や漬物などの塩分制限、ウォーキング、禁煙、節酒など、生活習慣の見直しが大切です。また、すり足歩行や方向転換のしにくさ、料理の段取りの悪さがみられる場合には、早めに医療機関へ相談しましょう。リハビリテーションにより、機能改善や悪化予防が期待されます。

気づかないうちに進む「小さな脳梗塞」

脳梗塞というと、片方の手足に力が入らなくなる、言葉が出にくくなるなど、重い症状が突然現れ、そこで初めて気づく病気というイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。
もちろん、脳梗塞にはこのような分かりやすい症状があります。

一方で、脳の中では、目に見えない小さな変化が静かに進んでいく場合もあり、
その一つにラクナ梗塞が挙げられます。

脳には大小さまざまな血管がありますが、このうち脳の奥深くを走る非常に細い血管が詰まることで起こる小さな脳梗塞を、ラクナ梗塞といいます。

血管が詰まると、その先に酸素や栄養が届かなくなり、脳の細胞が障害を受けます。

ただし、ラクナ梗塞では障害される範囲が比較的小さいため、症状に気づかないまま経過することがあります。

しかし、症状が目立たないからといって、軽く考えることはできません。ラクナ梗塞は、細い血管が少しずつ傷んでいくことで起こりやすくなりますが、脳の中に小さな梗塞がいくつも重なると、将来的に歩きにくさ、転びやすさ、判断力や集中力の低下など、さまざまな症状を引き起こします。場合によっては、認知症につながることもあります1

ここでは、ラクナ梗塞の仕組み、症状や起こりうる生活の変化、そして予防とリハビリテーションの役割について
分かりやすく説明します。

細い血管が詰まるメカニズム

ラクナ梗塞の土台には、長年の高血圧による血管の変化があります。血圧が高い状態が続くと、細い血管の壁に強い圧力がかかり続けます。

この負担によって血管の壁が傷み、血管の壁は次第に厚く、硬くなっていきます。その結果、血液の通り道は狭くなり、血流も悪くなります。

さらに、傷んだ血管では血液の流れが乱れやすく、小さな血のかたまりができて、狭くなった血管をふさいでしまうことがあります2。すると、その先へ酸素や栄養を運べなくなり、血管の先にある脳の一部が障害されてラクナ梗塞が起こるのです。

多発すると起こりやすい歩行障害と脳血管性認知症

ラクナ梗塞は一つだけであれば、症状が軽く済むこともあります。しかし、たくさんのラクナ梗塞ができると、体を動かす、考える、覚える、判断するといった働きに関わる様々なネットワークが少しずつ寸断されていきます。

ここでは、生活への影響が大きい歩行障害と脳血管性認知症について解説します。

歩行障害

歩行障害は、単に足の筋力が落ちることで起こるわけではありません。脳は、足を前に出すだけでなく、姿勢やバランスを保つ、左右の足をタイミングよく動かす、歩幅や足の上げ方を調整するといった複雑なコントロールを行っています。

ラクナ梗塞が増えると、脳による歩行コントロールがうまく働きにくくなり、歩幅が小さくなる、すり足になる、方向転換が苦手になる、転びやすくなるなど種々の問題が起こりやすくなります3

歩行障害が生活に与える影響
  • 外出がおっくうになる
  • 買い物や通院に不安を感じる
  • 階段や段差を避けるようになり、生活の範囲が狭くなる
  • 転倒による骨折・入院でさらに体力が低下し、介助が必要になることもある

こうした変化が進むと、外出がおっくうになったり、買い物や通院に不安を感じたり、階段や段差を避けるようになり、生活の範囲が狭くなっていきます。また、転倒によって骨折や入院につながると、さらに体力が低下し、介助が必要になることもあります。

そのため、歩きにくさや転びやすさは、単なる加齢のせいと考えず、早めに原因を確認することが大切です。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の働きが低下して起こる認知症です。
ラクナ梗塞が脳の中にいくつもできると、考える、覚える、判断する、集中するといった働きに関わる部分が少しずつ障害されていきます。

そのため、物忘れに加えて、物事の段取りが難しくなる、判断に時間がかかる、長い時間集中できなくなるといった変化が現れます4

例えば、料理をする時に手順が分からなくなる、以前よりも会話の反応が遅くなる、これまでおこなっていた趣味が手につかなくなるといった形で、日常生活の中に少しずつ影響が出始めます。

自分では「年のせい」、「疲れているだけ」と感じることもありますが、家族が先に変化に気づき、病院で原因が発覚することもあります。

こんな症状が目立つ場合は早めに医療機関へ
  • 物忘れが増えた
  • 段取りや判断に時間がかかるようになった
  • 意欲が湧かない・趣味が手につかなくなった

このように、ラクナ梗塞は小さな脳梗塞であっても、数が増えることで生活に大きな影響を及ぼします。
そのため、症状が軽い、あるいは目立たないからといって放置せず、早い段階から予防や治療に取り組むことが大切です。

予防と治療で大切なこと

血圧とお薬について

ラクナ梗塞の予防で最も重要なのは、血圧管理です。症状がない時期から、家庭で血圧を測る、定期的に健康診断を受ける、医師に相談するなどして、高血圧を早めに見つける工夫が必要です。

薬の自己中断に注意!特に注意が必要な方
  • 朝の血圧が高い方
  • 家庭で測る血圧と病院で測る血圧に差がある方
  • 夜間に血圧が下がりにくい方

高血圧と診断された場合、薬を飲んで血圧が下がっても、自己判断で中止してはいけません。
血圧が安定している場合でも、薬を中止すると再び血圧が高くなり、ラクナ梗塞の危険が高まることがあります。
特に、朝の血圧が高い方、家庭で測る血圧と病院で測る血圧に差がある方、夜間に血圧が下がりにくい方などは、医師と相談しながら調整を行うとよいでしょう。

たばことお酒について

喫煙は血管を傷め、血液の流れに悪影響を及ぼします。
自分だけでやめることが難しい場合は、禁煙外来を活用する方法もあります。

また、お酒の飲みすぎも血圧が上がる原因となります。例えば女性の場合、病気のリスクを高める飲酒量は、1日あたりの平均純アルコール摂取量20g以上とされています。

純アルコール20gの目安(女性)
  • ビール:中瓶1本程度
  • 日本酒:1合程度
  • ワイン:グラス2杯程度
  • チューハイ:7%の350mL缶1本程度

飲酒量が多い場合には、記録をつけて自分の飲酒状況を振り返り、減酒に取り組むことが勧められています5
薬を飲んでいる方や、持病のある方は飲酒量について医療機関で相談をしましょう。

食事と運動について

食事と運動の見直しは、血管の健康を保つことにつながります。食事では、特に塩分を控えることが重要です。
味噌汁、漬物、加工食品などは、知らないうちに塩分が多くなりやすい食品です。

いきなり厳しく制限しようとすると続けにくいため、無理ない工夫から始めていきましょう。

無理なく続けられる塩分制限の工夫
  • 汁を残す
  • 減塩調味料を使う
  • 香味野菜や酸味を活用する

運動では、ウォーキングなどの有酸素運動を生活に取り入れることが一般的です6)
ただし、すでに脳梗塞の既往がある方、心臓病や腎臓病がある方、膝や腰に痛みがある方は、自己判断で運動量を増やすのではなく、医師やリハビリテーション専門職に相談しながら自分に合った方法を見つけることが大切です。

リハビリテーションについて

リハビリテーションでは、歩き方やバランス、疲れやすさ、転びやすさ、日常生活で困っていることを専門職が確認します。

そして、一人ひとりの状態に合わせて、筋力をつける練習、バランスを保つ練習、転倒を防ぐための工夫、家の中で危ない場所の見直しなどを行います。

リハビリテーションで行うこと
  • 筋力・バランスを保つ練習
  • 転倒を防ぐための工夫・自宅環境の見直し
  • 記憶力や判断する力を保つための訓練
  • 薬の飲み忘れを防ぐ工夫など、その人らしい生活を続けるための支援

「転ばずに買い物へ行きたい」、「趣味を続けたい」など、その人らしい生活を続けるための支援を行うことも、リハビリテーションの重要な役割です。

リハビリテーションによって、残された力を活かし、より安心して日常生活を送れるようになることが期待できます。

本記事のまとめ
  • ラクナ梗塞は脳の奥にある細い血管が詰まる小さな脳梗塞で、無症状のまま見つかることもある
  • ラクナ梗塞が積み重なると、歩行障害や脳血管性認知症を引き起こし、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性がある
  • 血圧を記録する・薬を自己判断で中断しない・食事・運動・禁煙・減酒などの生活習慣を見直すことが重要
  • 症状がみられた場合でも、リハビリテーションによって機能の改善や悪化予防が期待できる

著者より

ラクナ梗塞は「小さいから大丈夫」ではありません。症状がないまま積み重なることで、気づいたときには歩行や認知機能に影響が出てしまうことがあります。
日々の血圧管理や生活習慣の見直し、そして気になる症状があれば早めに医療機関へ相談することが、将来の生活を守る第一歩です。


参考文献
  1. Wardlaw JM, Smith C, Dichgans M. Small vessel disease: mechanisms and clinical implications. The Lancet Neurology. 2019; 18(7): 684-696.
  2. Caplan LR. Lacunar Infarction and Small Vessel Disease: Pathology and Pathophysiology. Journal of stroke. 2015; 17(1): 2-6.
  3. Sharma B, Wang M, McCreary CR, et al. Gait and falls in cerebral small vessel disease: a systematic review and meta-analysis. Age and ageing. 2023; 52(3): afad011.
  4. Jacova C, Pearce LA, Costello R, et al. Cognitive impairment in lacunar strokes: the SPS3 trial: Annals of neurology. 2012; 72(3): 351-362.
  5. 厚生労働省. 習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方(女性編). https://kennet.mhlw.go.jp/tools/tools_alcohol-female/index (アクセス日2026年5月25日).
  6. Kleindorfer DO, Towfighi A, Chaturvedi S, et al. 2021 Guideline for the Prevention of Stroke in Patients With Stroke and Transient Ischemic Attack: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2021; 52(7): e364-e467.

ご自身やご家族の「すり足」や「段取りの悪さ」にお悩みの方へ

ラクナ梗塞は小さな脳梗塞ですが、繰り返し多発することで、歩行障害や認知機能の低下を静かに進行させます。「最近よくつまずく」「年齢のせいか物忘れやミスの効率が増えた気がする」といった些細な変化を、単なる年齢のせいにせず、早い段階で適切なアプローチを行うことが重要です。

リハマッチでは、脳神経疾患のリハビリ経験が豊富な理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が、ご自宅での最適なリハビリプランや生活環境の調整(転倒防止対策)をご提案し、将来の悪化予防と安心できるその人らしい生活を全力でサポートします。

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この記事の著者

永井 邦明

永井 邦明

令和健康科学大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 助教認定作業療法士 / 博士(社会福祉学)

プロフィール詳細

医療機関において、急性期、回復期、地域包括ケア病棟、外来を利用される対象者への作業療法を経験させていただきました。近年では他の研究者と協力して、介護の必要な方が就労的活動を行う方法についての研究や、認知症当事者の利用を想定した公共図書館の物理的環境整備に関する研究、情報通信技術を活用して高齢者が自宅にいながら社会参加活動を行うオンラインものづくり教室に関する研究などに取り組んでいます。

この記事はリハマッチ監督チームにより監修されています

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