専門家によるお悩み解決情報

Articles

カテゴリー: 健康・予防の知識
タグ: 健康, 予防, その他(5件)

働き盛り世代の脳梗塞 ― ストレス・睡眠不足・生活習慣が血管に与える影響 ―

こんな人に読んでほしい!
  • 40代・50代で仕事や家庭に追われる毎日を送っている方
  • 慢性的なストレスや睡眠不足が続いている方
  • 健康診断で血圧や血糖値の異常を指摘されたことがある方
  • 脳梗塞は高齢者の病気で、自分にはまだ関係ないと思っている方
この記事の要約

40代・50代の働き盛り世代における脳梗塞は、仕事のストレスや睡眠不足、高血圧などの生活習慣病を背景に、自覚症状のない「隠れ脳梗塞(ラクナ梗塞)」を含めて静かに進行します。 一時的に症状が消える一過性虚血発作(TIA)は本格的な脳梗塞の重大な前兆であり、迅速な受診が必要です。 予防には、毎日の血圧測定、睡眠確保、禁煙、休肝日の設定、5分からのウォーキングなど、日々の無理のない生活習慣の見直しと自己管理が血管の老化を防ぎ、未来の自立した生活を守る鍵となります。

はじめに

「脳梗塞は高齢者がなる病気」と思っていないでしょうか。実は近年、40代・50代で脳梗塞を発症する人は決して珍しくありません。 むしろ仕事や家庭で最も忙しいこの年こそ、脳梗塞の危険因子を多く抱えています。

「朝早くから夜遅くまで働く」、「会議や部下の管理に追われる」、「帰宅後の仕事の連絡が鳴り続ける」、「休日も完全には休めず、気づけば慢性的な睡眠不足」、そんな生活を何年も続けていると、体の中では静かに血管の老化が進んでいきます。

そして、脳梗塞はある日突然起こります。しかし、実際には、その何年も前から血管は少しずつ傷つき続けています。 ある日突然、下記のような症状として現れます。

ある日突然現れる症状の例
  • 朝起きたら手が動かない
  • 言葉が出てこない
  • 顔がゆがむ
  • 歩けなくなる

脳血管障害のリハビリテーションに携わってきた経験を踏まえながら、医学的知見も交えて解説します。

40代・50代が脳梗塞の危険因子を抱えやすい理由

40代・50代は人生で最も責任が大きくなる時期です。職場では管理職となり、家庭では子育てや親の介護が始まる人もいます。 一方で身体は確実に老化を始めています。20代では問題なかった生活習慣も、この年代になると血管へ大きな負担をかけるようになります。

特に危険なのは、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、過度な飲酒、肥満、睡眠不足、慢性的ストレスなどです。 これらはすべて脳梗塞の発症リスクを高めることが知られています。40代・50代は「まだ若い」という意識と、「身体は確実に老化している」という現実のギャップが生じやすい年代です。 20代や30代では多少無理をしても回復できたかもしれません。しかし40代以降になると、血管や内臓は少しずつ老化し始めています。

実際に脳梗塞を発症された方からは、「健康診断で血圧が高いと言われた」、「最近疲れやすかった」、「休日も仕事の事ばかり考えていた」、「睡眠は5-6時間だった」といった話を聞くことが少なくありません。 脳梗塞は突然起こる病気ですが、その背景には長年積み重なった生活習慣やストレスが存在していることが多いのです。

「隠れ脳梗塞」の存在

さらに近年問題となっているのが「隠れ脳梗塞」の存在です。脳梗塞でいうと、「突然倒れる」、「片麻痺になる」というイメージを持つ方が多いかもしれません。 しかし実際には、自分でも気づかないうちに小さな脳梗塞を起こしている場合があります。こうした「隠れ脳梗塞」の多くは、高血圧や動脈硬化などを背景として生じることがあり、その中にはラクナ梗塞が含まれます。

初期には症状がほとんどなく、

隠れ脳梗塞で見られる変化の例
  • 物忘れが増えた
  • 集中力が続かない
  • 疲れやすくなった
  • 以前より仕事の効率が落ちた

といった程度の変化しか現れないこともあります。そのため、加齢や仕事の疲れだと思い込み、そのまま放置されるケースも少なくありません。

しかし、このような小さな脳梗塞が繰り返されることで、将来的に大きな脳梗塞につながることがあります。実際にMRI検査を受けた際、「脳梗塞になった記憶はないのに、過去の脳梗塞の痕跡がありますね」と言われて驚かれる方もいます。 脳梗塞は突然起こる病気ではなく、何年もかけて静かに進行していることがあるのです。

脳梗塞のリスクファクター8項目(高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・過度な飲酒・肥満・睡眠不足・慢性的ストレス)を解説した図
脳梗塞のリスクファクター

ストレスはなぜ血管を傷つけるのか

強い心理的ストレスを感じると交感神経が活性化し、血圧上昇、心拍数増加、血管収縮などが起こります。 これに加えて、上司との人間関係やノルマ、長時間労働、将来への不安等が毎日続くと、血管は慢性的に高い負荷にさらされる状態になります。 例えるなら、「毎日フルで走り続ける車」のような状態です。最初は問題がなくても、やがてエンジン部品に負担が蓄積します。血管も同じなのです。

人間の身体は、本来であれば危険から身を守るためにストレス反応を起こします。例えば、目の前に危険を感じた際には、血圧や心拍数が上昇します。 しかし、現代社会では、終わらない会議や深夜のメール、部下への対応、売上目標など、様々な心理的負担が持続的にかかることがあります。 その結果、血管の内側は少しずつ傷つき、動脈硬化が進行していきます。脳梗塞は突然発症するように見えても、その背景では動脈硬化や血管障害が何年もかけて進行している病気ともいえるのです1)

見逃してはいけない脳梗塞の初期症状

脳梗塞は突然発症することが多い病気ですが、その症状にはいくつか共通した特徴があります。 特に、以下のような症状が突然現れた場合は注意が必要です。

突然現れたら注意すべき症状
  • 顔の片側が下がる
  • 片腕に力が入らない
  • 言葉が出ない
  • 呂律が回らない
  • 片目が見えにくい
  • 突然ふらつく
  • 激しいめまい

特に注意したいのは、「少し休んだら治った」、「しばらくすると元に戻った」というケースです。こうした症状は軽視されがちですが、脳梗塞の前触れである可能性があります。 このように一時的に症状が消失する状態は、一過性虚血発作(TIA)と呼ばれ、本格的な脳梗塞の前触れである場合があります。症状が消えても安心せず、速やかに医療機関を受診することが重要です。

働き盛り世代が特に注意すべき生活習慣

脳梗塞を予防するためには、特別なことを始める必要はありません。まずは日常生活の中で、血管への負担を減らす基本的な習慣を身につけることが重要です。 具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

血管への負担を減らす基本習慣
  • 血圧測定を習慣化
  • 睡眠を確保
  • 栄養バランスが整った食事摂取
  • 禁煙
  • 運動習慣
  • 飲酒量を減らす

特に高血圧は、自覚症状がないまま血管障害を進行させることから、「サイレントキラー」と呼ばれることがあります2)3) 40代・50代の方と関わる中で私が感じるのは、「自分は大丈夫」という思い込みです。「仕事が忙しい」、「家族を支えなければならない」、「まだ若い」というように考え、自身の健康管理を後回しにしてしまうことがあります。

実際に、脳梗塞で入院された方の中には、「健康診断で血圧が高いと言われていた」、「薬を飲んでいたが途中でやめてしまった」、「最近疲れやすかった」と振り返る方も少なくありません4)。 身体は何らかのサインを出していることがあるため、その小さな変化を見逃さないことが大切です。

脳梗塞を防ぐために今日からできること

もし今、「最近疲れが取れない」、「血圧が高いと言われた」、「健康診断を受けていない」という方は、一度ご自身の生活習慣を見直してみる機会かもしれません。 脳梗塞は突然起こる病気ですが、原因の多くは日々の積み重ねです。忙しいからこそ、自分の体を後回しにしないことが大切です。

脳梗塞予防のために、特別なことを始める必要はありません。まずは日常生活の中で無理なく続けられる以下のような行動から取り入れてみましょう。

今日から始められる行動
  • 毎日同じ時間に血圧を測る
  • エレベーターではなく階段を使う
  • 寝る前のスマートフォン時間を減らす
  • 休肝日を作る
  • 定期的に健康診断を受ける

特にウォーキングは、血圧管理や糖尿病予防、ストレス軽減など、多くの効果が期待されます。「忙しいからできない」ではなく、「まずは5分だけ歩いてみる」といった無理のない目標から始めることが継続の第一歩になります。 その小さな積み重ねが、将来の脳梗塞予防につながるかもしれません5)

本記事のまとめ
  • 40代・50代は仕事や家庭の責任が増す一方、血管の老化が進む年代であり、脳梗塞は他人事ではない
  • 自覚症状のない「隠れ脳梗塞(ラクナ梗塞)」が静かに進行している場合がある
  • 慢性的なストレスは血圧上昇や血管収縮を介して動脈硬化を進行させる
  • 症状が消えても安心できない一過性虚血発作(TIA)には速やかな受診が必要
  • 血圧測定・睡眠確保・禁煙・休肝日・5分のウォーキングなど、無理のない習慣の積み重ねが予防の鍵

参考文献
  1. 溝口貴正. エイジング・環境因子が加速する血管老化は脳機能を低下させるか. 2020. 35. 79-82
  2. 水野誠. 高血圧治療薬の併用療法:ARBとCCB併用による臓器保護効果. 日薬理誌. 2012. 139. 246-250
  3. 常盤文枝, 他. 高血圧症をもつ地域在住中高年のセルフマネジメント状況. 保健医療福祉科学. 2016. 6. 43-48
  4. 藤岡祐介, 他. 若年発症脳梗塞の臨床特徴-当院における検討-. 脳卒中. 2009. 31. 15-22
  5. The Joint National Committee on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressure. The fifth report of the joint national committee on detection, evaluation, and treatment of high blood pressure. Arch Intern Med. 1993. 153. 154
  • X
  • facebook
  • LINE

この記事の著者

平野博文

平野博文

認定作業療法士・Ph.D.

プロフィール詳細

1988年鹿児島生まれ。作業療法士として急性期から生活期まで幅広いリハビリテーションに従事。現在は約200名規模のリハビリテーション科の統括責任者として、組織運営や人材育成にも携わっている。また、バイオメカニクス分野で研究に取り組み、博士号を取得。認定作業療法士としての専門性を基盤に医療の質向上を追求。ピラティスインストラクターとしての資格も有し、予防医学や健康増進にアプローチしている。臨床・研究・マネジメントを軸にリハビリテーションの可能性を広げる取り組みを続けている。

この記事はリハマッチ監督チームにより監修されています

リハビリパートナー選び、
お手伝いします

あなたの症状、お悩みをお聞かせください。
一人ひとりのお悩みと状況に合わせた
セラピストを
コンシェルジュが厳選します。

  • お気軽にご相談ください マッチングまで無料
  • プラン・料金を相談して決められる
  • 介護施設法人からお申込み多数