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おとなのASDとは? “なんとなく生きづらい”理由を理解するために

こんな人に読んでほしい!
  • 人間関係やコミュニケーションに生きづらさを感じている方
  • 「発達障害かもしれない」と悩んだことがある方
  • 仕事や日常生活で、予定変更やあいまいな指示に強いストレスを感じる方
  • 身近にASD(自閉スペクトラム症)のある方や、特性が気になる方がいる方
この記事の要約

大人のASDによる生きづらさは、本人の努力不足や性格の問題ではなく、生まれつきの脳の特性によるものです 。よって、自分はダメだと悲観的になるのではなく、自身の特性を俯瞰して認める必要があります 。

これからは、ふせんやメモの活用、適切な敬語、友人との練習といった具体的な工夫を取り入れ、職場や専門機関に相談して周囲の協力を得ることが重要となります 。一人で抱え込まずに自分を理解することで、社会性やコミュニケーションの困難は軽くなります 。

はじめに

「人間関係がうまくいかない」、「周囲とのやり取りですれ違いを感じやすい」、「予定の変更がつらい」、このような困りごとを抱えて生活している人は少なくありません。

近年では、「おとなの発達障害」という言葉が広く知られてくるようになり、 自閉スペクトラム症(以下ASD)について耳にした方もいるのではないでしょうか。

ASDは、本人の努力不足や性格の問題ではなく、生まれつきの脳の特性によって、周囲とうまくコミュニケーションを取れなかったり、すれ違ってしまったりすることが起きる状態です。

今回は、おとなのASDについて、よくある困りごとや病院での受診の流れ、日常でできる工夫について紹介します。

自閉スペクトラム症ってなに?

自閉スペクトラム症について

自閉スペクトラム症(ASD)は、対人関係やコミュニケーションの特徴、こだわりの強さなどを特徴とする発達障害のひとつです。 大きく分けて、その困りごとには3つの特徴があるとされています。

ASDの困りごとの特徴
  • 社会性の困難
  • コミュニケーションの困難
  • 想像力や柔軟性の困難

また、子供のころには困りごとがなく目立たなかった人でも、就職や一人暮らし、結婚、職場での対人関係などのきっかけで、生きづらさや困りごとが表面化する場合もあります。

自閉スペクトラム症で起きやすい困りごと

先ほどの3つの特徴に沿って、起こりやすい困りごとの例を挙げます。これらの例があるからと言って、必ずしもASDというわけではありません。 これらのことが本人の生活を障害しているか、本人が困っているか、という視点が重要です。

① 社会性の困りごと

相手との距離感や場面に応じた振る舞いをするのが難しく、「悪気はないのに誤解されやすい」ということがあります。 また、集団や他人の気持ちがつかめず、場の雰囲気や相手の意図を読み取りにくい場合もあります。

  • 興味のある話題になると話しすぎてしまい、適切な距離での付き合いができないため、大人になってから友達ができない。
  • 年上の人が話しかけてくれたので、くだけた言葉遣いで話をしたら、相手を怒らせてしまった。
② コミュニケーションの困りごと

言葉をそのまま受け取ることが多く、曖昧な表現や行間を読むことが苦手な場合があります。

  • 上司から「適当にまとめておいて」と言われたが、どこまでやればよいかわからず、作業が進められない。
  • 「ちょっとここ見ておいて」と頼まれ、トラブルが起きてもそのまま「見て」いたら怒られた。
③ 想像力や柔軟性の困りごと

急な変更や予測できない出来事に強いストレスを感じることがあります。用意してあるはずのものがなかったり、いつもと違う状況になったりすると、嫌な気持ちになったり体調不良になってしまうことがあります。 「これでいいか」と思えない、物事の優先順位をつけるのが難しい、などの柔軟性の困りごともあります。

  • 予定があったのに、当日急に雨模様になってしまい、一日ずっと不機嫌に過ごしてしまう。
  • いつも使っているものと違うメーカーの商品が用意されているだけで、強い違和感や不安を感じてしまう。

自閉スペクトラム症の治療って?

病院での受診・検査

前述のような困りごとに直面することが多く、生きづらさを強く感じる場合は、 精神科や心療内科など、病院での受診を考えてみてもよいかもしれません。 診察では、「子供のころの様子」や「職場での困りごと」などを確認され、必要であれば心理検査などを行うこともあります。

受診のポイント

もし、受診の結果「自閉スペクトラム症」と診断を受けたとしても、それがゴールではありません。 あくまでも自分の特性を理解し、困りごとを減らして生活しやすくするための手がかりとして受診を考えることが大切です。

治療法

ASDを「治す」という治療法や薬は、現在のところありません。 心理療法などのカウンセリングを通して自分の特性を知り、自分が生きやすくなるようにすることが主な治療法です。 しかしながら、ASDに合併して起きやすい不安や抑うつ、不眠、集中できないなどの症状に対して薬物療法が行われる場合もあります。

自分で工夫できることはなに?

ASDの特性による生きづらさや困りごとは、日常生活の工夫や周囲との関わり、自分の考え方などを工夫することで負担が軽くなる場合があります。以下に3つの視点でまとめてみます。

① 自分を知る

自分自身について、特徴を理解することは重要です。

「どんな困りごとがあるのか」、「どんなときに困ったのか」など、自分が困っていることについて考えてみましょう。 それによって、自分が生活のどこに不安やストレスを感じるのかを理解し、生活の工夫につなげることができます。

また、困りごとだけではなく「これは自分にとって誇れることだ」という得意な部分も同時に自分で考えておきましょう。 ASDの特性には、「これと決めたことは集中して取り組める」、「細かいルールをしっかり守れる」など強みにつながるものもあります。

自分を客観的に見るコツ

「自分にはできない」、「自分はダメだ」と悲観的になるのではなく、「こういうところやこういう時にイヤなんだ」と困りごとだけを俯瞰的に見たうえで、「でもここはすごいよ」と自分を認めてあげることが大切です。

② 生活の工夫

自分のことをある程度理解したら、実際の生活に活かしていきましょう。

ASDの特性を持つ人には、「視覚優位」と言って、耳で聞く内容よりも目で見る内容の方が整理しやすい人が多くいます。 物事の優先順位がわからなくなる時は、ふせんやメモなどの目で見る情報を使うように工夫してみましょう。

コミュニケーションの困りごとの場合は、「こういう場面ではこう伝えると伝わりやすい」といった具体的な方法を整理しておくことが役立つ場合があります。

コミュニケーションの工夫 例
  • 適切な敬語を使うと気持ちよく会話ができること
  • 誘いを断りたい時に差し障りなく断る言い方を知ること
  • 天候や気候、出身など、初対面でも当たり障りのない会話のネタを知ること
  • 社交の後は疲れる場合が多いので、休息をとること

③ 周囲の協力

ここまで、自分自身でできる工夫を挙げました。しかし、場合によっては職場や周囲の人の協力も必要です。

例えば職場で、「あいまいな指示だと理解が難しいため、できるだけ具体的に伝えていただけると助かります」と相談してみるのもよいでしょう。 また、必要に応じて、自分の特性や受診結果について職場へ共有することで、業務上の配慮を受けやすくなり、働きやすさにつながる場合もあります。

コミュニケーションや交友関係の場合は、事情を説明したうえで、信頼できる友人などを相手にして、 実際の場面を想定した「練習」を重ねてみるのもいいでしょう。

また、子育てをしている保護者の場合は、親だけでなく子供自身にもこれらの特性が見られたりする可能性があります。 困りごとを自分だけで抱えず、信頼できる人や施設に相談をすることをおすすめします。

おわりに

ASDの特性は、周囲から見えにくいことも多く、「わがまま」、「空気が読めない」、「努力不足」などと誤解されてしまうことがあります。 そのため、本人が「自分が悪いんだ」、「もっと頑張らないといけないんだ」と、自分を責めながら生活している場合も少なくありません。

しかし、ASDは性格の問題ではなく、生まれつきの脳の特性によるものです。自分の特徴を理解し、生活の工夫や周囲との関わり方を少し変えることで、生きづらさが軽くなることもあります。

もし今、「なぜかうまくいかない」、「人間関係がしんどい」と感じているなら、自分を責めすぎず、「自分にはどんな特徴があるのだろう」と少し立ち止まって考えてみることも大切かもしれません。

困ったときは、一人で抱え込まず、信頼できる人や専門機関に相談することも選択肢のひとつです。

本記事のまとめ
  • ASDは生まれつきの脳の特性によるもので、努力不足や性格の問題ではない
  • 社会性・コミュニケーション・想像力や柔軟性の3つの面で困りごとが生じやすい
  • ASDを「治す」薬はないが、カウンセリングや日常の工夫で生きづらさを軽くできる
  • 自分の特性を知り、視覚的なメモ活用やコミュニケーション方法の整理が有効
  • 強い生きづらさを感じる場合は、精神科・心療内科への受診も選択肢のひとつ
著者より

「なんとなくうまくいかない」という感覚は、長年抱えていると自己否定につながりやすいものです。 ASDの特性を知ることは、自分を責めるためではなく、自分を理解してより生きやすくするためのツールです。 一人で悩まず、まず「自分の困りごと」を書き出すことから始めてみてください。


参考文献
  1. The history of autism,National Autistic Society.National Autistic Society – The history of autism
  2. 日本作業療法士協会,作業療法ガイドライン,自閉スペクトラム症 第一版.2022,日本作業療法士協会 作業療法ガイドライン ASD(PDF)
  3. 司馬理英子.もしかして「発達障害?」「うまくいかない」がラクになる.主婦の友社,2024,191p
  4. 厚生労働省,発達障害情報・支援センター.発達障害情報・支援センター(厚生労働省)
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この記事の著者

佐藤 千鶴

佐藤 千鶴

作業療法士/健康科学修士

プロフィール詳細

1998年大阪府生まれ。回復期・慢性期病棟で脳血管障害や整形疾患のリハビリテーションに従事した後、京都橘大学大学院にて修士号を取得。地域の介護予防事業にも関わり、高齢者の生活支援に携わる。作業と生活の質(QOL)の関係に関心を持ち、研究と臨床の両面から取り組んでいる。現在は児童発達支援事業所(放課後等デイサービス)に勤務し、いわゆる“グレーゾーン”とされる子どもたちの困りごとに対して、作業療法の視点から支援を行っている。

この記事はリハマッチ監督チームにより監修されています

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